10月1日に協和発酵キリンが誕生した。合併した両社(旧協和発酵工業と旧キリンファーマ)は企業文化が似ているといわれ、実際、研究テーマも似通っていた。合併話の当初から、研究所の交流は始まっている。
だが、全社を見渡せば、楽観はできない。「初めて会った気がしない」という社員も多いが、合併で苦労した他社の実例どおり、そんなに甘くはないはずだ。仕事のやり方は違うし、実際に机を並べると蕫箸の上げ下ろし﨟さえ気になる。不満が出るのは当然だ。むしろ、こうした不満を隠すと妙な遠慮やストレスにつながる。摩擦はあっていいし喧嘩してもいい。
ただし、「世界トップクラスのスペシャリティファーマになる」という目標を達成するためのトラブルであってほしい。最高益だったにもかかわらず、なぜこんな面倒なこと(合併)をするのか。一緒になって目標を早く実現するためだ。その精神を忘れないことだ。
まずは世界に通用する新薬を、1~2つ出すこと。それさえあれば、道は一気に開ける。次に、スピード重視の経営だ。これまでは、研究者の裁量に任せ、自前主義にこだわってきた。独創性を育むには悪いことではないが、他社との競争や戦略性という点でスピードに欠ける面があった。
今後は協和発酵キリンとしての意思決定のプロセスを明確にし、判断を早めていく。今は世界規模の生産力、販売力にはほど遠い。M&Aやアライアンスも視野に入れ早くゴールに達することも必要だと考えている。
(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 佐藤寛久)