台湾と日本をつなぐ蔵!台中65号で醸す輸出専用日本酒
台湾と日本をつなぐ酒造りを願い、島根県出雲市で台雲酒造を立ち上げた台湾出身の陳韋仁(チンイニン)さん。2008年、日本の神話好きが高じて、出雲大社に近い島根大学へ留学し、地酒と出合った。酒の魅力に取りつかれ、卒業後、獺祭醸造元の旭酒造で酒造りと海外営業を経験。その後、島根県の李白酒造など数蔵で醸造技術を磨き続けた。
酒の原料米に興味を持ち、蓬莱米という戦前の台湾産日本米にたどり着く。長粒(インディカ)種しか育たない台湾でも育つよう、改良された短粒(ジャポニカ)種だ。代表品種は亀治と神力を交配した台中65号で、陳さんはこの米を島根県で育て、当地での酒造りを決意した。だが、台湾にはすでに種もみはなく、奇跡的に残っていた沖縄県から16年に種もみを入手。本州での栽培実績がないため、農家が見つからず、18年から、自ら栽培に挑んだ。と同時に各地の蔵で酒造りを行う。その酒が、国内外の審査会で次々と上位に入賞し、台湾で9割が即完売。
醸造所を持たない陳さんに、大きな転機が訪れた。国税庁が輸出用清酒製造免許制度を新設したのだ。国内販売はできないが、輸出用の清酒ならOK。苦労の末、21年に免許を取得し、台湾と出雲から台雲酒造と命名。コンパクトな酒造機械や道具を集め、酒造りを開始。米は台中65号以外にも、山田錦や雄町、神力、愛山を用い、生酛や山廃など味に変化をつける。台湾での酒造りの要望も多いが、「日本で最高品質の酒を目指す」と陳さん。さらなる良酒をと意欲を燃やす。