エコカー補助金の効果で自動車ディーラーの業績は一時的に改善したが、構造問題は横たわったままだ。新車販売以外の事業の強化とさらなる店舗統廃合が急がれる。

「エコカー補助金はディーラー業界に功罪をもたらした」

 こう口にする自動車業界関係者が多い。9月まで実施されたエコカー購入補助金制度は、2008年夏のリーマンショック後に急落した自動車産業を一時的に救った。しかし一方で、自動車ディーラー業界において急務であるはずの構造改革はスピードが鈍化した。

 09年6月に政府が導入したエコカー購入補助金制度の効果によって国内新車市場はどん底から盛り返し、09年度の新車販売台数は08年度比3.8%増の488万台となった。図(1)のディーラー4社(トヨタ車主体のATグループ、ホンダ車、日産車主体のVTホールディングス、日産車主体の東日カーライフグループ、スバル車主体の静岡スバル自動車)の業績推移を見ても、経常利益率は回復したことがわかる。経費削減と、補助金のダブル効果だ。

 新車市場では安価な軽自動車の販売比率が年々上昇していたが、エコカーに対する減税および補助金が導入されてからは登録車がよく売れた。09年度の販売台数は、軽が前年度比6.1%減の170万台であるのに対し、登録車は同10.0%増の318万台。軽に比べて粗利益が大きい登録車の好調で多くのディーラーは補助金特需に潤った。