我々の目を楽しませ、疲れた心を癒してくれるヒマワリやトルコギキョウなどの花、毎日の食卓に上るおいしいメロンやトマト、トウモロコシなどの野菜――。これらの花や野菜の色、形、サイズ、味などが、種苗会社による品種育成を通じて絶えず進化し続けていることを、ご存知だろうか?
種苗会社は、国内外に展開する自社研究開発拠点で、日夜新たな品種の開発を行なっているのだ。
彼らは、開発した品種の種子を生産し、それを販売する。そのために、品種それぞれの特性に合った採種地を選び、そこで商品種子を生産する。採取された種子は、発芽・純度・病理などの厳密な検査を経て、種苗店、園芸店、量販店などに流通する。それが生産農家や一般の家庭に渡り、花や野菜に育てられる。品種はこうして世界に広まっていく。
横浜市都筑区に本社を構えるサカタのタネは、そんな花や野菜の研究開発に100年近く携わってきた種苗業界の雄。2010年5月期の売上高は対前年比2.6%増の約465.2億円、営業利益は同41.2%増の約16.8億円と、同社はここにきて堅調な増収増益基調にある。
同社の快進撃の背景には、積極的な海外展開がある。現在、米国、南米、欧州、アジアなど、世界19ヵ国に33の研究開発・生産・営業拠点を持ち、海外売上高比率は37%と、同業他社に比べてかなり多い。
とりわけ最近の成長の牽引役となっているのは、中国をはじめとするアジアでのビジネスだ。中国での販売好調が追い風となり、同社のアジア・オセアニアおよび南米地域の営業利益は、約2億8800万円と前期比4倍に急伸した。
磨き上げた「オリジナル品種」を、中国にも根付かせつつあるビジネスモデルには、どんな秘密があるのか? 坂田 宏社長に詳しく聞いてみよう。
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――サカタのタネにとって、アジアはどのような魅力を持った市場ですか?
坂田社長 欧米が成熟市場なら、アジアは発展途上だが高い成長が見込める新興市場。1996年にタイ、97年に韓国、98年に中国、2008年にインドに進出し、研究開発、生産、販売を行なっていますが、種子販売では、特に潜在需要の高い中国とインドに力を入れています。