「日系企業への就職はあまり人気がありません。実はずっと前からなんです」
そう語るのは、中国で日系企業を中心とした人材紹介、研修などを行うインテリジェンス・アンカーコンサルティング(上海)有限公司の金鋭総経理だ。これまで当連載では、中国へ進出し、苦労を重ねながらも成功を遂げた日本企業を取り上げてきたが、経営者たちが口を揃えて課題としていたのが「優秀な現地人材の確保」だった。にもかかわらず、中国では就職先として日系企業の人気があまりないとすれば、今後の事業戦略にとっても大きな痛手となりかねない。金総経理が語る不人気の理由は一体どんなところにあるのか。また、日系企業が中国で直面する課題と、中国で勝ち残るためにどう進化すべきか。金総経理に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
欧米企業とは1.5~3倍の賃金格差、
“発展空間”がないため日系企業は不人気
――金総経理は、中国の就職市場で日系企業はあまり人気がないとおっしゃっています。では、なぜ日系企業は、人気がなくなってしまったのでしょうか?
人気がなくなってきた、というよりずっと人気がないといったほうがよいでしょう。特に新卒市場では、主だった採用活動をしていないために認知度が低いのが実態です。中途市場では全く人気がないわけではありませんが、日系企業では日本語が要求されるので、日本語圏だけでキャリアを築いていくとなると人気がないですね。社名は知っているけど働くイメージではないというところでしょうか。
そして人気がない理由として最も大きいのは、やはり賃金面です。日系企業は安定しており、クビにはなりづらいですが、賃金があまり高くありません。数年前から賃金は上昇傾向にあり、平均で若手は8000元~1万元、中堅で1万2000元~1万7000元程度が手取りになっていますが、それでも欧米企業とは1.5~3倍の賃金格差があるといわれています。
また、研修制度などが明確化されておらず、社員のキャリアアップが視野に入っていない会社が多いため、転職層にとって将来像が見えにくいのもその理由の1つでしょう。中国では転職を重ねてキャリアアップをしていく志向が大変強く、“発展空間”(自分が昇進・キャリアップできるチャンスがある)をとても重視しています。それに対して、日本の大手企業のほとんどが中国に進出していますが、それらの日系企業では、現地化があまりすすんでおらず、駐在員が上層部にいるため、“ガラスの天井”があるといえます。そうしたところも中国人の方たちの就業意欲を減退させているはずです。