いくたびも繰り返される北朝鮮の暴挙に振り回される国際社会。報復が報復を呼ぶ不測の事態を招かないためにも、北朝鮮を根本的に異なる方向に導くことが必要だ。ブルッキングス研究所のシニアフェローで、米国を代表する軍事専門家のオハンロン氏は、解決のヒントはベトナムにあると説く。
(聞き手/ジャーナリスト、瀧口範子)
北朝鮮による韓国のヨンピョンド(延坪島)への攻撃は、この国の「いつものやりかた」と言っていい。騒ぎを起こして世界の注目を集め、好条件での援助を引き出そうという魂胆だ。
(Michael O’Hanlon)
ブルッキングス研究所のシニアフェロー、および21世紀防衛イニシャティブ外交政策研究のディレクター。前職は、米議会予算事務所の国防アナリスト。極東アジアを含む軍事政策、軍事技術が専門で、国務省の国際セキュリティー諮問委員会のアドバイザーも務めた経歴を持つ。プリンストン大学で政策、国際問題を修め、博士号を取得。近著に『懐疑論的非核問題 (A Skeptic’s Case for Nuclear Disarmament)』(ブルッキングス)、『戦争の科学(the Science of War)』(プリンストン大学出版)などがある。
北朝鮮は、2009年に2回目の核実験を行って以来、アメリカや韓国、日本などからの援助が打ち切られた状態になっていた。そして今年3月には、韓国の海軍哨戒艦を魚雷で沈めた。それから8ヵ月。「ずっとそのまま我々のことを忘れて無視し続けるならば、これよりもっとすごい手段に出るぞ」という信号が、今回の行為だ。
もちろん、北朝鮮の真意を推し量るのは不可能で、今回の攻撃はキム・ジョンイル(金正日)総書記がキム・ジョンウン(金正恩)への世代交替をスムーズに行うための国威誇示行動であるという見方もあろう。だが、私はそうは見ていない。
それよりも、現状のシステムを維持し、援助によってさまざまな資源の提供を受けて指導部の人間がいい暮らしを続けていくという目的のために、軍事行動で適度に諸外国を苛立たせる。その目的を達成するためのものであり、彼らなりの論理にちゃんと沿ったものなのだ。しかも見返りに本気の反撃を受けることもない。
私は、北朝鮮に対する戦略は、より細かく順序立てたタイプのものに変換する必要があると考えている。もちろん、緊急の軍配備に反対しているのではない。だが、それは根本的な解決策にはならないと考えている。
私が提案するアプローチはこうだ。北朝鮮核問題をめぐる6ヵ国協議に参加するアメリカ、中国、韓国、日本、ロシアは、北朝鮮が進むべき道をひとつひとつクリアにして、一致団結してそれを進めていくということだ。
ちょうど、1975年以降のベトナムがたどったように、まず経済改革を推進し、人権政策を改善し、軍事コストを引き下げて、ついには非核化する。それを、順序立てて、成果を確かめながら段階的に進めていく。そして、アメリカを始めとした関係諸国が、各々のステップを経済援助や技術援助によってサポートしていくというものだ。