ルーフ付きで雨に濡れない!
アディバADシリーズ

 賢明な読者の方はすでにお気づきかと思うが、バイクの二大弱点のうち「雨に濡れる」のほうについては、ヤマハ・トリシティの部分では触れなかった。それには理由がある。バイクが真夏でも快適なのは、ライダーがむき出しで雨に濡れるからでもあるからだ。

ホンダ「ジャイロ キャノピー」

 だが、ホンダの50ccスクーター「ジャイロ キャノピー」のように、ルーフのついたモデルも存在する。走行風が雨を巻き込んで脇や背中にかかるのは致し方ないが、前面と上面から濡れることはかなり防げるのだ。

 ただしルーフは重く、重心を高めるという欠点がある。だからヤマハ・トリシティのようにあえてつけないスクーターのほうが主流だ。しかし、ルーフを折り畳み式にすることで両者の「いいとこ取り」に成功したメーカーがある。イタリアのアディバ社だ。

 アディバのADシリーズには200cc、300cc、400ccがあり、いずれもトリシティと同じくフロント二輪が傾く三輪式のスクーターだ。特筆すべきは、折り畳み式のルーフが標準装備されていることと、フロントスクリーンが大型で、ハンドル先端までを覆う形状をしていることだ。おかげで、走行風の巻き込みが少なく、雨風に対していっそう快適だ。

「折り畳み式ルーフについては、十数年前の初代開発の時点から強いこだわりがあり、それありきでスタートしました。風を感じたいときはオープン で、雨や陽射しを避けたいときはルーフつきでと、選べるようにしたかったのです。フロントスクリーンは、曲面加工に対応できる業者を探すのに苦労しました が、ユーザーの声を製品に取り入れようと、こちらもこだわりました」(アディバ 営業統括部長 赤間龍氏)

 アディバADシリーズは排気量も大きいため、走りにも余裕がある。だが、輸入車ということもあり、最小排気量のAD tre200でも希望小売価格84万8000円(税込み)からという価格が悩ましいところだろう。軽自動車も視野に入ってくる価格帯だからだ。

折りたたみ式ルーフというアイデアで「雨に濡れにくい」バイクを実現したアディバADシリーズ

 ちなみにルーフつきというなら、屋根付きの車室をさらに強化し、シートベルトもつけてライダーを守るという発想で、欧州ではヘルメットなしで乗ることのできたスクーターがかつて存在した。

 BMWが2000~02年にかけて製造販売していた「C1」だ。その独創性は高く評価されたものの、125ccなのに185kgという車重と、高すぎる重心が災いして、(とりわけ後退時の)押し歩きに難があり、早々に姿を消すことになった。

 ここに、バイクの軽快さと居住性という二律背反の問題が浮上する。アディバADシリーズやBMW C1の方向性を突きつめて、四輪車なみの居住性を求めるなら、三輪式にして前二輪の間隔を広く取り、排気量も大きくすればよさそうなものだが、そこまでく ると、もはやバイクの範疇には収まらなくなる。超小型モビリティや軽自動車の領域に入り込んでしまうのだ。

 だが、ヘルメットが不要で停止時にも自立するというのは、バイクにこだわりのない人たちには大きな魅力だ。そこで、より広い視野で見渡せば、また別のあり方も見えてくる。