「福原が握手拒否」は誤解。真実は…?

――その間、福原選手は茫然とした表情に見えました。相手選手との握手を拒否したという声もありましたが、実際はどうだったんですか?

村上 いや、それはまったくの誤解です。福原は握手しようと相手選手に歩みよろうとしましたよ、最初はね。

 でも、相手がもう、握手なんてするような状態じゃなかった。握っていたラケットを遠くに放り投げて、倒れて喜んでいるわけですよ。これはフェアプレー精神に欠ける、絶対にやってはいけない行為なんです。

 素晴らしいスマッシュを放って試合を決めたのなら、叫んでもガッツポーズしても、何してもいい。しかし、相手が絶対にとれないエッジボールを打ってしまって、しかもそれで試合が決まってしまったら、相手に謝るのが先なんです。それが卓球のマナーです。

 ところが、今回の相手は、その最低限のマナーを守らなかったどころか、ラケットを放り投げた。こちらが抗議していて、まだ判定がどうなるかわからないにもかかわらずです。あれは「私はもう試合しない。判定がどうなろうがもう試合はしない」という、試合放棄ともとれる態度なんです。

――なるほど。

村上 その相手の態度に、さすがの福原も腹が立ったんじゃないですかね。だから、一度握手しようとしたけどやめた。相手のマナーに対して「認められない」と言って、動かなくなりましたね。

――福原選手自身は、あれはアウトだと思っていたのでしょうか。

村上 見えていなかったと思いますよ、角度的に。僕が抗議から引き下がってきた後、福原は聞いてきました。「村上さん、あれは入っていたんですか?」と。審判ももう引き上げて、判定は変わらない。僕は答えました。「たぶん入ってた」と。そうしたら「わかりました」と答えていましたね。

――そのうち、相手選手が福原選手のところに握手に来ましたね。そのときも、福原選手は納得してない表情に見えました。しかし、監督が何か声をかけて、相手の握手に応えました。あのとき、監督は何と声をかけたんですか?

村上 ひとことふたことですね。「もう終わったよ。しゃーない。握手しよう」と。それ以外、ないですよね。

3位決定戦まで中1日。どのように立て直したのか?

――ともあれ、ドイツとの準決勝は「最悪の負け方」をしたわけですよね。相手のマナーも悪いし、エッジボールでの決着で後味も悪い。加えて、「銀メダル以上」という目標も消えた。そんな状況で、3位決定戦まで中1日。どのように立て直したんですか?

村上 何もしない(笑)。というか、女子の指導はとくに、ネチネチしたらだめなんです。誰よりも悔しがっているのは彼女たちですから、怒ったり喝を入れたりする必要なんてありませんし、慰め出したらキリがない(笑)。そもそも、そんなものを彼女たちは求めていませんよ。

 彼女たち自身、卓球という勝負の世界に生きているプロフェショナルですからね。実際、翌日にはそれぞれに気持ちを切り替えていましたよ。だから、僕自身は余計なことをしないほうがいい。それよりも、淡々と、次の試合で勝つための戦略を立てるだけです。

 だいたい、本人が一所懸命やって、作戦もよくて、それでも失点するし、負けるのが卓球なんです。ある意味、みんな「負け慣れ」していますからね。一度の敗戦で監督からどうこう言うことはないです。