「約2150万戸」――。この数字を聞いて、読者は何を思い浮かべるだろうか。これは今から17年後の2033年における、日本全国の空き家の予測戸数だ。総住宅数の、実に3割が空き家になる見通しだ(野村総合研究所予測)。
特に深刻なのが地方だ。
総務省の調査によると、13年の空き家数は約820万戸で、総住宅数に対する空き家率は13.5%。しかし、空き家率トップの山梨県は17.2%で、全国平均のおよそ1.3倍に達している。
この倍率を17年後にそのまま当てはめると、山梨県の空き家率は約4割に達する計算になってしまう。10軒に4軒が空き家とは、もはや“空き家だらけ”といっても過言ではない。
空き家が増える背景の一つは、日本の世帯数が19年の5307万世帯をピークに25年に5244万世帯、35年に4956万世帯へと減っていくことが見込まれるためだ。
団塊世代が20年代後半に80歳代に突入することも影響する。団塊世代は一戸建ての持ち家率が75.3%(13年の調査)と高く、彼らの息子、娘が結婚して別に家を持っている場合、本人が亡くなれば、その持ち家は次の日から即、空き家になるからだ。
一戸建ての空き家は放っておくと庭に雑草が茂ったり、家が朽ちたりして周囲の景観を損なうとともに、防犯上も問題となり、隣近所に迷惑をかけることが多い。国も増え続ける空き家に対処するため、15年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家特措法)の施行を始めた。
同法では、都道府県や市区町村などが空き家を調査し、適切に管理されず、倒壊の危険や周囲の景観を著しく損なっていると判断した場合は「特定空き家」に指定される。
実は、空き家が放っておかれる背景には、土地に家が建っているだけで、税金が安くなるという税制の問題がある。しかし、同法で特定空き家に指定されると、毎年払う固定資産税と都市計画税の軽減措置が受けられなくなり、納税額は更地と同じになる。税負担は従来の3~4倍に増える。
さらに、改善命令に従わない場合、50万円以下の罰金を科されるとともに、行政代執行の対象となれば、強制的に解体されるという厳しい処分が科せられる。もちろん解体費用は所有者に請求される。
今は所詮他人事と聞いている人も、将来はそうはいかなくなるかもしれない。「33年に2150万戸に空き家が増えるということは、それだけ空き家の“所有者側”として関わる人が増えるということ。たとえ当事者にならなくても、親族や親しい友人が空き家問題を抱える可能性は増加する。むしろ空き家問題とは無縁の人のほうがレアケースになるだろう」と、NPO法人空家・空地管理センターの代表理事を務める上田真一氏は話す。