夏場に東北の豪雪地帯を旅行していたときのこと。野っ原の真ん中に建っている小屋が真ん中からひしゃげるように潰れていたのを見て、我が目を疑った。それこそ、巨人が腕を真上から振り下ろしたかのような潰れ方だ。地元の人に聞いてみると、雪かきをする人がいなくなった建物が、冬の間にそうやってつぶれていくらしい。小屋だけでなく、人がいなくなった木造の家屋や、屋根があまり丈夫でない廃工場なども、雪の重みに耐えかねて損壊することがあるそうだ。
総務省統計局の調査によれば、1963年から一貫して、住宅数が伸びるとともに、空き家率も上昇している。2013年時点で、総住宅数は6063万戸と過去最高を記録すると同時に、空き家率も13.5%(820万戸)に上り、こちらも調査が始まって以来、最悪の数字となった。
言うまでもなく、日本は人口減少期を迎えているわけだが、新築が増えて、古い家屋に誰も住まなければ、空き家は増える一方だ。今年6月に野村総合研究所が発表した試算によると、2033年の総住宅数予想は約7100万戸。そのうちの約2150万戸、実に30.2%もの住宅が空き家になってしまう。既存の住宅を減らし、あるいは住宅以外への転用が進まなければ、3軒に1軒が空き家という「大空き家時代」が到来してしまう。
かく言う私の両祖父母の家も、既に空き家となって10年以上が経過している。いずれ私の両親が亡くなれば、私自身の実家も空き家となる可能性が大だ。私は実家で、生まれてから大学進学までの18年間を過ごしたので、思い入れこそあるものの、故郷に帰って実家を継ぐかと言われると、その予定はない。同じような人はたくさんいるようだ。
実家に愛着がある人は70%
一方で「継ぐ」問題は先延ばしに
不動産情報サイトなどを運営するアットホーム株式会社が、30代・40代の男女618名に対して実施した“実家に対する思い”の調査結果を9月1日付けで発表している。この中で、「実家は、あなたが長年住んだ思い出がある家ですか?」という問いに対し、「はい」と答えたのは70.6%。「実家がなくなるのは、寂しいと思いますか?」も「はい」が68.4%だ。