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デジタル時代のプラットフォーム戦略

――カテゴリー・プラットフォーマーの出現

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第61回】 2016年10月7日
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プラットフォーマーと
プラットフォーム戦略

 それでは、プラットフォーマーとはどのような存在なのであろうか。まず、プラットフォーム・ビジネスとは「複数のグループのニーズを仲介することによってグループ間の相互作用を喚起し、その市場経済圏を作る産業基盤型のビジネスモデル」を指す(『プラットフォーム戦略』平野敦士カール、アンドレイ・ハギウ著、東洋経済新報社)。このような、ビジネスを展開する組織をプラットフォーマー、そして、それを実現するための戦略をプラットフォーム戦略と呼んでいる。

 また、プラットフォーマーには、単純に2つのグループをつなぐ閉鎖的なプラットフォームであるツーサイド・プラットフォーマーと、多数のグループをつなぐ拡張性を持ったマルチサイド・プラットフォーマーがある(図2)

出典:ITR

カテゴリー・プラットフォーマーの出現

 例えば、Google PlayやApp Storeを提供するGoogle社やApple社は、アプリケーションのダウンロードサービスにおけるプラットフォーマーといえる。プラットフォーム戦略は、ビジネスや価値創造を行う「場」を提供するものであり、昨今のデジタルビジネスの分野だけでなく、以前から青果市場、ショッピングモール、家庭用ゲーム機、おサイフケータイなどでも活用されてきた戦略である。

 その中で特に注目すべきは、特定の業種や技術分野でデジタルエコシステムを形成しようとするカテゴリー・プラットフォーマーの出現である。例えば、米GE社はIoTと産業用途に特化したクラウドサービス「Predix Cloud」を2016年から提供すると発表し、これを世界初で唯一の産業データ分析のPaaSだとしている。ここに至るまで、同社は、産業機器とITを融合する「インダストリアル・インターネット」のコンセプトを打ち立て、経営戦略の中核に据えている。これは、産業用IoT分野のカテゴリー・プラットフォーマーの地位を確立する動きといえる。

 同様の動きは国内でも加速している。ファナックは2016年8月、製造業向けIoT活用プラットフォーム「FANUC Intelligent Edge Link and Drive system」(FIELD system)を開発し、約200社のパートナー企業にAPIを公開すると発表した。FIELD systemは、ファナックが米Cisco Systems社、米Rockwell Automation社などと協業して開発を進めているソフトウエア製品群で、IoTを駆使して生産設備を制御し、生産工程の効率化や自動化を実現するとしている。独Bosh社と独SAP社もこの分野での協業を発表しており、産業分野のIoT活用におけるカテゴリー・プラットフォーマーの座を狙う覇権争いは、今後一層激しさを増すことが予想される。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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