性を入れ替えて演じるという
突拍子もないコンセプト

成毛 歌舞伎役者の家に生まれた女の子はどうでしょうか。役者として舞台に上がることはできないわけですが。

おくだ 寺島しのぶさん(七代目尾上菊五郎の娘)は、男の子に生まれたかったと思っていたことがあるそうです。

成毛 でも、歌舞伎の創始者と言われる出雲阿国は女性ですよね。

おくだ 彼女は男役を演じ、花魁役は男性が演じました。性を入れ替えるという突拍子もないコンセプトに、当時すでにあった「かぶき」という言葉をあてて「かぶき踊」としたのです。その後、遊女が舞台に立つのは風紀上良くないということになり、結果として男性だけで演じられるようになりました。それ以降300年以上をかけて、男性が女性を演じるというメソッドが確立されました。衣装もかつらも、そのために最適化されています。

成毛 私は歌舞伎の伝統を支持しますが、でも、今、女性が歌舞伎の舞台に立つことは、風紀上は問題ないですよね。

おくだ 違和感なく女性が歌舞伎の舞台に立つには、男性が演じるのに最適化された女形という型にはまる必要がありますね。私は女だからと、生身で女性を演じるとうまくいかないのではないかと思います。かつて新派(歌舞伎から派生した演劇)には初代水谷八重子さんという女優がいらして、彼女は一時代を築きました。なぜ、彼女は成功したのか。リアルタイムでご覧になっていた方に言わせると、彼女は女としてではなく、女形として舞台に立っていたそうです。

成毛 女性が女形として舞台に立つ新しいタイプの歌舞伎があってもいいかもしれませんね。

おくだ 大竹しのぶさんや宮沢りえさんといった実力のある舞台女優の演技を見てみたいです。同じように思う人は少なくないのではないでしょうか。現代劇に歌舞伎役者が進出するのが当たり前になった今、逆があってもいいと私は思います。