「いつも、考えすぎて損してばかり!!」
日本人は礼儀正しくて、とても優秀……なのに、日々必要以上に思い悩んでいないだろうか?
“究極の合理思考”を身につければ、もっと楽しくラクになる」――。数十億規模の案件に関わり、インド人部下オペレーションを経験したインド麦茶氏は、「常に自分中心」「短期志向」「無計画で今を生きている」ように見える彼らに「日本人が幸せを謳歌するための“ヒント”」を見出したという。
新刊『インド人は悩まない』では、人口14億・上位1%が富の40%以上を所有する超競争・過密・格差社会を生き抜く人々の「規格外の行動力」と「抜け目なさ」の秘密を紹介している。今回はその魅力の中から一部をお届けする。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

インド人の親は「子どもの将来の悩みゼロ」。その理由が意外すぎたPhoto: Adobe Stock

インド人は子どもの将来に悩まない

自分の子供をどんな風に育てようか、どんな大人になってほしいか、これは親ならば誰しもが考えることだ。習い事は何をさせようか、どの学校に行かせようか、そして、将来はどんな仕事について、どんな家庭を築くのだろうか。親の悩みは尽きない。

しかし、ここインドでは、幸か不幸かこのような悩みに頭を悩ませる余地は日本より少ないように見える。

ご存じのかたもいると思うが、インドには“カースト”というものが存在する。これは西洋人がインド地域の人々の土着の風習や慣習を自分たちの言葉にまとめて表現した言い方にすぎず、実際には“ジャーティ”という何千種類もある職業別の内婚集団と、“ヴァルナ”という宗教的な身分意識が織り交ざったもので構成されている。インド民達は、この枠組みに基づいて、謂わば、「カエルの子はカエル」、「魚の子は魚」というように、自分の親族の職業を後追いするような形で基本的な将来設計を考える。

「親と同じ仕事をする」意外なメリット

この考え方に、先進国の多くの人々から批判的な目が向けられることもある。私も中学生の時に教科書で習って衝撃を受けた古い記憶がある。
しかし、一旦立ち止まって考えてほしい。もし、あなたがこれまで仕事で学んできた経験やノウハウ、業務上の秘密や処世術などを、まとめてごっそりあなたの子供に伝えることができるとしたら、あなたの子どもは、その業界や仕事で非常に有利なポジションに付けるのではないか。これらが全て手元にある状態からスタートすれば、さぞあなたも楽だっただろう。そうやって考えると、親の職業をトレースするという戦略は、相対的に極めて有利なポジションからスタートできる。

遺伝的にも勝率が上がる

「遺伝」という意味でも、子どもが、あなたやその配偶者が従事している仕事につくことは、他の人々と比べて、優位性がある可能性が高い。

とある研究によれば、遺伝子を子供の能力の説明変数として考えた場合、数学や音楽の才能は非常に影響が大きな分野として挙げられる。可能性が全く未知な領域で勝負するよりも、遺伝という観点から見ても親族集団が得意な分野で勝負するほうが勝率があがる。

厳しい競争環境での「合理的な選択」

インド民の社会システムに内包されている、「一族で、同じような分野の職業で生計を立てる」というやりかたは、前近代的だと言われようとも、厳しい競争環境で生き残るための合理的な選択なのだ。

逆に、日本人は、自分の頭で考えているつもりが、実は「考えすぎ」て正解から遠回りしているような場面が数々ある。

インドにまったくなじみがない人も、これを機会に彼らの世界に触れてみるのはどうだろうか。私は実際にそれらに触れて日本や西欧米では得ることができない発見をさせてもらっている。
『インド人は悩まない』は、そんなインドから我々現代日本人の悩みの根に効く、あなたが自分の人生を、強く、楽に生きるためのヒントを纏めた一冊である。

(本記事は『インド人は悩まない』の一部を加筆・調整・編集した原稿です)