なぜ「ハリー・ポッター」だったのか?

森岡 テーマパークの場合には、ある程度流行っている、ある程度力のあるブランド、世界観のあるブランドを持ってくるところが勝負だと思っています。そこでのリスクをどれだけ取らないようにするかというのが、実は結構大事だったりするわけです。費用的にはかかるんですけれどね。『ハリー・ポッター』も高かったんですが、『ハリー・ポッター』ならば採算が立つ。見込みが立つというのがすごく大事なんです。

 で、この計算の中で、一番重要視してるのは、やっぱり物語性みたいなものなんです。これは、そのものが持っている価値ですよね。「なぜ人は『ハリー・ポッター』が好きなのか」「何を求めているのか」ということが重要なんです。

『ハリー・ポッター』は、別に魔法使いの話じゃないんですよね。一人の少年の成長過程の中で見られる「勇気」をテーマにした作品だと私は思っている。不遇な少年が、何のとりえがあるかもわからない中で、ある日突然世の中を救うような存在になる。ここに、人は平凡な自分自身を重ね合せて、感動するわけです。『ハリー・ポッター』が持っているこの一番根源的な核は、『ハリー・ポッター』という作品で語り継がれるだけではなく、さまざまなところで「リアプライ」できるコンセプトだと思うんです。

 で、そうしていくと、成功しているブランドっていうものには、何がしかの共通項があると見ることができる。私たちプロデューサーがその共通項を見出して、プロデュースすることができるものなのかどうか。ゼロがイチとなったあとにできることを、私は確認したいんですよ。とはいえ、本心をいうと、ゼロをイチにするメカニズム、クリエイティブの世界をどうやって再構築するのかということを解析できるようにはしたいんですが……。

 実際に、それができる作家さんもいると思うんですよ。自然に、やっていらっしゃる方もいると思うんですよね。今後、狙ってクリエイティブを作れる時代が来るのかということにも実は興味があるんです。

佐渡島 そうですね。