世界観は「狙って」作れるか?

森岡 佐渡島さんは、狙ってやっているんじゃないですか?

佐渡島 クリエイティブな世界観を作るのをどう定型化・認識化するかは、ずっと私の命題です。

 たとえば「なんでアイドルの嵐は人気があるんだろう?」と考えたんです。ファンたちは、嵐のメンバーが本当に仲良さそうな様子を見て憧れるらしいんですよね。深い絆というのを見せられると、気持ちがいいわけです。で、『宇宙兄弟』ではその絆の深さを、一見仲が良いとは思えない兄弟で再現した。すごくつながっている二人っていうのを描こうと決めて、それはある種、嵐からの「リアプライ」なんですよ。

森岡 『宇宙兄弟』は、「絆」の話なんですね。

佐渡島 はい、「絆」の話なんです。だから、兄弟だけじゃなくて、いろいろな人の絆を描いています。

森岡 だから、宇宙の話なのに、女子に売れたんだ。そういうことか。

『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』(森岡毅/KADOKAWA)

佐渡島 そうなんですよ。実は、完全に女子に売りたいと思って作ったから、「嵐は何で人気か?」っていう話を小山宙哉さんとして、仮説を立ててマンガを制作したんです。

森岡 すごいなぁ。

佐渡島 しかし、多分マスに受ける話の型って、そんなに多くはないんです。「絆」の話や「勇気」の話は、マスに受けるとは思っているんですが……。

 あと、『インベスターZ』の三田さんのことを、本当にすごいと思った一件があるんです。『インベスターZ』の一話目の打ち合わせをしたときに、「このストーリーにもっとリアリティ持たせるために、どこかの会社の社員がお金を渡されるとか、そういう展開はあり得ませんか?」って聞いたんですよ。そうしたら、「中学生が理不尽にお金を預けられているから、読者がその苦難に共感できるんだ」と。「これをサラリーマンでやったら、『仕事なんだから、やれよ』って読者は思うだけだ」と言うんです(笑)。「リアリティがあっても、共感度は下がるから、これはもう中一という設定が絶対だ」てね。その絶妙なバランス力に納得しちゃいましたね。

森岡 学校の経営のために、どうしても利益を生み出さなきゃいけないんですよね(笑)。面白い設定ですよね。

佐渡島 「中一が絶対」っていい切れる三田さんやっぱりすごいなぁ。クリエイターだなと思ったんです。

(来週月曜日に続きます)