まもなく師走を迎えようとする11月の上海で、女性たちの間をある「黄色い券」が飛び交っていた。この券をめぐって社内の空気は色めき立ち、「行く、行かない」をめぐって電話やメールが頻繁にやりとりされる。ある日系企業の職場ではこんな会話が交わされた。
「あなた、行く?行くならこの券あげるわ」
「もちろん、絶対行くわよ」
「初日に行かないといいものがなくなっちゃう、私は9時に行って並ぶつもりよ」
彼女たちが手にしているのは、花園飯店のテナントである上海三越が主催する「冬の大感謝祭」の入場券。年に一度開催され、今年で13回目を迎える(花園飯店、上海三越の正式名称はそれぞれ「オークラガーデンホテル上海」、「花園飯店(上海)三越」)。
地下鉄「陝西南路」駅の3番出口から通じる花園飯店への道を、女性たちが足早に歩く。空気はすでに殺気立っている。案の定、12月10日の初日は早朝7時から行列ができ、10時の開場を50分も前倒しして開場となった。
ホテル内の1000平米の会場にアパレル、靴、バッグ、アクセサリー、化粧品、食品など63社が出展、筆者が駆けつけた9時半にはすでに多数の女性たちが詰めかけ、必死の形相で物色を始めていた。
目玉は“三越オリジナル”
日本ブランドは健在
目玉は三越オリジナルのカシミヤのセーターだ。三越がメーカーを通さず直接内モンゴルで生産しているオリジナル商品で、その高い品質は日本人のみならず、中国人消費者の間でも高い支持を得ている。
セーターの陳列台はすでに異常なほどの熱気を醸し出していた。蟻一匹入る余地のないその人だかりに、誰もが揉まれて、踏まれて、なぎ倒されながら、何とかして食い込もうとする。