データはあるのにどう使ったらいいのか分からない。そんな企業は多いだろう。『統計学が最強の学問である』著者・西内啓氏が、ビジネスに勝つ統計学を、分かりやすく実践する。

 (あらすじ)事務機器販売会社「オフィス・デイリー」はこの1年、販売低迷に悩まされている。営業部の若手社員、真板直は、部長からいきなり販売必達プロジェクトのリーダーに任命され、その原因を突き止め対策を立てようとデータと悪戦苦闘するうちに、統計学の面白さ、実用性に気付く。最初はデータを円グラフにすることしかできなかった社員が、先輩社員と統計学の達人、西内啓氏にビシビシ鍛えられながら、ビジネスで統計学を実践していく。

「いったいどうした!」──。

 事務機器販売会社「オフィス・デイリー」の営業部のフロアで、営業部長の堂下裕三が部下の真板直を問い詰めていた。この1年、同社は販売が伸び悩んでおり、2014年度の目標達成に赤信号がともっていたからだ。

「まいったなあ」

 いつもの口癖で真板がうっかりつぶやく。耳ざとくそれを聞き付けた堂下は「人ごとじゃない。真板、おまえをたった今から販売必達プロジェクトのリーダーに任命する。ここに営業日報のデータがある。2日後の取締役会で販売低迷の原因と対策をプレゼンしてくれ。頼んだぞ!」。

 1分後、堂下からデータがメールで送られてきた。「どうすればいいんだ。まいったなあ」。またしてもつぶやく真板だった。

 エクセルファイルを開くと、営業部のメンバーが毎日入力している日報のデータがずらりと並んでいる(図1)。

「やっぱりデータはグラフにして見える化すると分かりやすいよな」。理系出身で数字には強い真板は、初回の訪問事由ごとにデータを並べ替えていく。よし、できた。1時間後、ようやく円グラフ(図2)を作ると、勇んで堂下の席に向かった。