手配書 いちばん下に、西武の社紋

ツチノコの写真に
賞金10万円

 さて、素石らの地道な活動によってツチノコ探索の夢は世間に知られることとなり、熱心な西武百貨店の社員の働きによって、懸賞金の提供を受けるに至る。西武の社紋入りツチノコ手配書に、その後訪れるバブル期日本を牽引した西武グループの器の大きさを見せつけられた気がするのは、私だけだろうか。

 こうしてついにノータリンクラブは、田辺聖子の新聞連載小説にまで登場。その結果、「ツチノコをしばらく飼っていた」「死体を拾った」「焼いて食べた」などなど、信憑性の高い情報が次々に寄せられるようになるのである。

 だが、10年以上にわたって続けられた探索は、伝説の詐欺師の登場によって少し切ない幕切れを迎える。本書のタイトル『逃げろツチノコ』は、素石のツチノコへの深い愛情から生まれたものだったのだ。

 ところで本書、冒頭には田辺聖子が寄稿して「ヨホホーイ」と叫んでおり、解説は三上丈晴・月刊「ムー」編集長!という豪華ぶりなのだが、私がぶっ飛んだのは、カバーを外して裏を見たときである。そこにはさまざまなツチノコの姿が描かれ、最後にこんな一文が印刷されていた。

“  生きたツチノコの生態写真を撮った人に賞金10万円!

 幻の怪蛇ツチノコは、すべての日本人にとっていつまでもロマンとして生きつづけてほしいものです。見つけても殺したり檻に入れたりしないでください。写真に収められた人には10万円の賞金を差し上げます。写真は編集部と有識者が鑑定し、賞金は最初の持参者に限ります。

山と溪谷社・ツチノコ係 ”

『逃げろツチノコ』
山と渓谷社 山本素石著 284ページ 1200円(税別)

 つ、ツチノコ係があるのか、山と溪谷社?? 有識者って誰? それにしても10万円って安すぎないか?

 ここで、はたと気が付いた。きっと、山と溪谷社・ツチノコ係は、ツチノコは「いる」と信じている。そして、高い懸賞金に群がるゲスどもよりも純粋に夢とロマンでツチノコを探してくれる人が現れるのを、期待しているのではないか? ──私は全身に湧き上がってくる感動を、禁じえなかった。

 今も大の大人たちに夢とロマンを与えてくれる、ツチノコ。急に寒くなって、彼らはもう冬眠してしまったかもしれない。みなさんもぜひ本書を読んで発見の策を練りながら、共に来年の春を待とうじゃないか。

※画像提供:山と渓谷社