高知県を代表する魚といえばカツオ。しかし、カツオ以外にも高知県民が愛してやまない魚がいる。
うつぼ。
「え?」という人も多いかと思う。わたしにとっても、うつぼといえば「怖そうな顔をした、ヘビみたいなグロテスクな生きもの」というイメージが強い。よもや食べるものとは思っていなかった。実際、日本でうつぼを食べる地域は限られている。なおかつ、ごく一般的に食べる習慣があるのは高知県と和歌山県くらいだという。
とある高知県人に尋ねてみた。
――うつぼ、食べますか?
「もちろんです。あんなに美味しいものはありません」
おそるおそる、聞いてみた。
――浜で、うつぼを見たら「美味しそう」なんてまさか、思いませんよね?
「思わなくもないです」
!!
高知県民の全員が全員、海岸のうつぼに垂涎の眼差しを向けるわけではなかろうが、なんと、高知では県内で漁獲される量に対して、2、3倍もの量を消費しているらしい。「うつぼが好きすぎて」、うつぼが不足気味なため、愛媛や徳島、宮崎など他県で水揚げされたうつぼは、「うつぼLOVER」の待つ高知にやってくる。
日本中のうつぼを食べ尽くしかねない、なんとも「うつボンバー」な県だったのである。
そんな「局地的すぎる」グルメで町おこしの活動がスタートした町がある。高知県中央部に位置し太平洋に面した須崎市。県内でも、古くからうつぼを食してきた歴史があるという。貴重な食文化を全国の人々に発信ようと、2013年に須崎商工会議所青年部と須崎青年会議所の有志で結成されたのが「須崎うつぼ学会」だ。
――みなさん、本当に、うつぼは普通に食べていらっしゃるんでしょうか?
集まった会員のみなさんが、一斉にうなずく。
「もちろんです」「そりゃあ、もう大好きです」「子どものころから食べてます」「秋の神祭にはないといかんやろ」「老若男女みんな、よく食べます」