みずほ信託銀行社長 野中隆史<br />マスリテールは譲渡し<br />信託機能の提供で存在感Photo by Toshiaki Usami

──みずほ信託銀行(TB)と、みずほ銀行(BK)が個人向け事業で提携する狙いは。

 みずほフィナンシャルグループ(FG)の傘下銀行は、それぞれミッションが明確だ。個人に広くサービスを提供する“マスリテール”は、BKが取り組むべき分野。しかしTBは信託という“機能”を提供する側面が大きい。

 店舗網やATMの数といったインフラの規模は、TBとBKでは、まったく違う。だから、われわれが持っているマスリテールの顧客層を、BKにシフトしていくべきだと考えていた。もともとFG全体の次期システムの完成までに整理したいと考えていたが、完成を待たずとも、ある程度の投資で実現できることがわかった。

 そのためサービスや商品、インフラをいち早くBKにシフトさせることを決めた。住宅ローンの新規獲得も10月にやめた。TBの戦略商品ではないからだ。

──それでは、TBのミッションは何なのか。

 顔を突き合わせて長期間にわたってサービスを提供していくことだ。われわれはこれを“顔の見える顧客”への特化と呼んでいる。
顧客層でいえばシルバー層、地権者、富裕層。サービスとしては、不動産や遺言信託が大きなビジネスになる。