OPEC、8年ぶりに減産合意
原油相場の「潮目」は変わるか?
OPEC、8年ぶりに減産合意――。9月下旬、そんなニュースが注目を集めた。原油市場に大きな影響力を持つOPEC(石油輸出国機構)が、低迷する原油価格を反転させるため、原油の減産に踏み切るというのだ。
2014年前半まで1バレル=100ドル台で高騰していた原油価格は、同年夏場以降、地滑りのような勢いで下落。原油収入減に苦しむ産油国の経済減速や株安を通じて世界経済を不安定化させ、「逆オイルショック」と呼ばれる事態を引き起こした。原油取引の代表的な指数であるWTI、北海ブレント、中東ドバイ価格は、2016年年初に底を打ったものの、その後も大きく反転する気配を見せず、足もとで1バレル=40ドル台を漂っている。
OPECが減産に踏み切ることで需給の緩みが解消し、原油価格は上昇基調に転じるのか、それとも――。市場は減産の具体論が話し合われる11月末のOPEC総会を見守っている。
原油安は、原油の需要国にとって基本的には追い風となる。日本のように、原油のほとんどを輸入に頼る国にとって、その価格が下落することは、原材料費や輸送コストの低下につながり、経済にとってプラス要因となる。2016年4~9月期の貿易統計(速報値)によると、折からの円高と原油安で貿易収支は約2兆4600億円の黒字となった。原油安の効果はやはり大きい。
しかし、よいことばかりではない。原油安の進行で原油を収入源とする産油国の多くは財政が悪化している。巨額のオイルマネーを運用する産油国の政府系ファンドが、世界の金融市場から資金を引きあげる動きも見られた。原油安の長期化は世界経済の失速要因になり、巡り巡って日本経済にも打撃を与えかねない。さらに、原油リスクを見込んだマネーが「有事の円」に流れ込むと、日本はさらなる円高に苦しめられることになる。
「日本企業はどちらかと言えば、原油高のリスクに敏感です。しかし一方で、原油安も大きなリスク要因であることを、肝に銘じたほうがいい。原油は安すぎてもダメで、高過ぎず、安過ぎずの『ほどほど』がちょうどよいのです」
こう語るのは、大手商社でコモデティビジネスに携わる関係者だ。OPECの減産合意によって、これから市場はどう動くのか。今後の相場動向と、それが世界に与える影響の吉凶を占ってみよう。
今回の原油急落の最大の要因は、世界の資源需要の牽引役と目されていた中国の景気減速に伴う、需要の落ち込みだ。2008年のリーマンショックを受け、それまで軒並み高騰していた原油などの資源価格は急落した。その後、中国が大規模な景気対策を実施したため需給は改善した。しかし、そのときの過剰投資のツケが回り、2015年に入って中国の経済成長は目に見えて鈍化。再び原油需要の低下を招いた。