長引く原油安に歯止めをかけるため、石油輸出国機構(OPEC)がついに増産凍結で合意した。原油相場の底抜けを阻止し、さらにOPEC自体の存在意義を市場に誇示するという、盟主サウジアラビアの戦略が短期的には奏功した形だが、生産割当量を決める11月の総会までなお土壇場での神経戦が繰り広げられそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男、重石岳史)

 市場やエネルギー業界の予想と反対の結果を出しがちなOPECが、今回も例外なく予想とは反対の一報を発した。

 世界の原油価格動向に圧倒的な影響力を持つOPECが9月28日、アルジェリアで開催された臨時会合で、加盟国全体の生産量を、日量3250万~3300万バレルを上限とすることで合意したのだ。11月に開催される総会で、正式に各加盟国の原油生産割当量が決められることになった。

 市場では8月の生産量実績が日量3324万バレルだったことから、約70万バレルの事実上の減産合意と捉えた。国際原油価格(WTI)はすぐに反応し、1バレル当たり44ドル台で推移していた価格は瞬く間に48ドルまで上昇した。

 実は、OPECは2月、4月、6月と直近3回の会合で、原油価格を上昇させるべく、減産合意に向けて調整してきたが、ことごとく失敗。特に4月の会合では、合意直前にサウジアラビアのサルマン国王の息子で、現在サウジ国内で絶大な人気と権力を誇るムハンマド・ビン・サルマン副皇太子の鶴の一声で破談になるという一幕もあった。

 そんな経緯から市場では、「今回もどうせ何も決まらない」という見方が大勢を占めていた。

ようやくOPEC加盟国は増産凍結へ向けて足並みをそろえることができた。価格推移やOPECに対する評価など、今のところOPEC加盟国にとって最も心地よい市場環境になっている Photo:新華社/アフロ

 それが一転、明確な生産量の上限設定という結論を出したものだから、「市場の空気を変えただけでなく、OPECに再び注目しないといけないと思わせる効果もあった」(加藤健太・三井物産エネルギー第一本部燃料部石油営業室長)。

 なぜ、「何も決められないOPEC」が、今回は増産凍結という結論に至ることができたのか。

 まず挙げられるのは、これ以上OPECの存在意義を低下させるわけにはいかないという危機感がOPEC内にあったことだ。もし、今回も増産凍結へ向けて何も決められなかった場合、「世界からOPECとは名ばかりの、足並みのそろわない連合と捉えられかねない状況だった」と野神隆之・石油天然ガス・金属鉱物資源機構主席エコノミストは指摘する。