カジノ経営に失敗し、破産申請した経験のあるトランプのビジネス手腕に不安はないのだろうか。

 ジョンは言う。

「ゼネラル・モーターズもクライスラーも破産申請した。デトロイト市の財政も破綻して破産。不況の大波を受けたミシガンでは1度や2度の破産で大騒ぎしてたら、新しい変化など到底実現できないんだよ」

 ジョン自身も経営者として、倒産の危機に見舞われたことがこれまで2度あったという。最初は1980年代。銀行の金利が20%に跳ね上がったときだった。そして2度目は8年前のリーマンショック直後。不景気でも安定しているはずの配管サービスの受注の数すらも激減。借金を抱え、キャッシュフローが足りなくなり、51人いた社員をリストラし、10人まで減らした。

「家族みたいな存在の社員のクビを切るのは苦しい決断だった。だが、ビジネスにはリスクが付き物なんだ。自分でビジネスをマネジメントした経験もないのに、金融機関への講演で巨万の富を築く錬金術師・ヒラリーには、街の経営者が身を削って必死にリスクを取る意味がわからないだろうがね」

政治の中心地からはるか彼方で
「トランプ大統領」を願う理由

 そう語る間にも、ひっきりなしに従業員たちが彼のデスクに書類のサインをもらいに来る。小切手を切りながら、工事現場の進捗状況を社員に確認するジョン。そもそも政治の中心・ワシントンからはるか彼方のミシガンの田舎で、ジョンはなぜ今トランプにこだわり、また保守派一筋の人生を送ることになったのか。

 共和党員の父と母の元で育ち、11歳で初めてライフルの撃ち方を父から習い、狩猟を教わった。父の死後、兄弟で母を助ける生活の中で、15歳の頃にはすでに「自分は小さな政府とバランス財政を望む保守派だ」とはっきり意識するようになっていたという。

 フェリス州立大学に進学すると、男子学生のクラブ、フラタニティに入り、保守派の友人との親交を深めるが、成績不良で落第。1965年にベトナム戦争のため徴兵され、陸軍兵士として2年間を過ごす。

 カリフォルニアで軍事訓練を受けていたとき、反戦を訴えるバークレー在住の学生たちのデモに遭遇した。

「あれが人生で初めてリベラル派と直接ぶつかった体験だった。言論の自由がある以上、彼らがデモをする権利は大いに認める。だが、もし軍の施設に彼らが突入してきたら、射撃の腕を見せてやろうと思っていた。でも、デモ鎮圧のための実弾は軍から支給されなかったから、構えていたライフルには実は弾が入っていなくて、空だったんだけど」