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コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国経済を震撼させる「Galaxy Note7」発火事故

事態はもはや“IT立国”の信用問題に

趙 章恩 [ITジャーナリスト]
【第12回】 2016年11月4日
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事態はもはや国レベル
経済減速に追い打ちか

 「Galaxy Note7」の生産台数は推定で430万台(このうち韓国とアメリカでの販売台数は約250万台)なので、これを全て廃棄すれば相当な損失になる。

 加えて、協力会社が生産途中だった「Galaxy Note7」の部品や、部品を生産するために購入した原材料も全てサムスン電子が買い取ることになった。韓国国内のサムスン電子スマートフォン製造関連協力会社は、中小企業を中心に1000社近くある。「Galaxy Note7」の製造中止で無期限休業した会社もあると報じられているほど、その打撃は大きい。

 実は、日本の大手企業にも「Galaxy Note7」向けの部品を同社に供給している企業は少なからずあるため、今回の事態は、日本としても決して他人ごとではない。

 何よりも、「Galaxy」ブランドのイメージダウンは大きな痛手だろう。特に、「Note7」は、サムスン電子としても前作の「Note5」や「S6」よりも遥かに力を入れて世に送り出した自慢のスマートフォンで、ファンを中心に購入予約が殺到するほどマーケットの期待も大きかった。

 それが、まさかの原因不明の発火事故である。その打撃は損失金額以上に大きいはずだ。

 サムスン電子は今回のリコールを機に、製品の安全性強化のため、品質点検プロセスを全て見直すと発表した。どのように見直すのか、具体的な実行計画はまだ発表されてないが、まずは「Galaxy Note7」の発火原因を究明し、スマートフォンビジネスを担う無線事業部をはじめ、全社の業務プロセスを見直すとしている。

 同社はスマートフォンの販売台数では世界1位(営業利益ではアップルが世界1位)であり、今まで年間3億台を超えるスマートフォンを販売してきた。これは当然、韓国経済にも大きな影響を与える。

 未来創造科学部(「部」は日本の「省」)のデータによると、2016年9月の韓国のICT産業全体の輸出額は145億3000万ドル、輸入額は73億4000万ドルで、71億9000万ドルの黒字だったが、携帯電話端末の完成品と部品の輸出額は18億7000万ドルで、前年同月比33.8%の減となった。

 韓国では今回の発火事件によって韓国産携帯電話全体のイメージが悪くなり、輸出がさらに冷え込むのではないかと深刻に懸念する声もある。

 その一方でサムスン電子は、2017年春リリース予定の新機種「Galaxy S8」の話題を広げようとしているが、その前に、今回の発火原因を究明することが先決である。

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趙 章恩
[ITジャーナリスト]

ちょう・ちゃんうん/韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。
IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「ニューズウィーク」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国の国民生活に、ITがどれほど浸透しているか、知っている日本人は意外に少ない。ネット通販、ネットでの納税をはじめとする行政サービスの利用、公共交通機関のチケットレス化は、日本よりずいぶん歴史が古い。同時に韓国では、国民のIT活用に対する考え方が、根本的にポジティブなことや、政府が規制緩和に積極的で、IT産業を国家の一大産業にしようとする姿勢などが、IT化を後押ししていることも事実である。

一方の日本は、どうして国を挙げた大胆なIT化の推進に足並みがそろわないのか。国民生活にITが浸透している韓国の先行事例を見ながら、IT化のメリットとリスクを見極めていく。

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