Photo by Kiyoshi Takimoto
2010年2月に行われたバンクーバーオリンピック。選手たちの半分以上、およそ70人もが現地で使用し、テレビニュースでも話題になったのが、ウィーヴァジャパンの薄型マットレスだ。
冬季オリンピックの選手たちだけではない。08年夏の北京オリンピックでは、平泳ぎで金メダルを二つ獲得した北島康介選手をはじめ、水泳選手たちを中心に愛用され、10年のサッカーワールドカップでも日本代表選手たちが使用するなど、日本のトップアスリートたちに大人気の製品だ。
「製品のよさには絶対的な自信がある」。ウィーヴァジャパン社長の高岡本州は胸を張る。体圧をスムーズに分散させ、体がマットレスに沈み込み過ぎないため、寝心地がよく、疲れが取れやすい。予選を重ねて決勝に進むアスリートたちにとって、疲労回復はなにより重要なのだ。
赤字続きの3年間
地道な実績づくりがようやく実を結ぶ
高岡がウィーヴァジャパンを設立したのは04年。伯父が経営していた釣り糸などプラスチックの糸を作る射出成形機メーカーの経営が行き詰まり、再生させるために高岡が引き取ったことが始まりだった。
不採算部門を切り離して再生を試みたものの、2年たっても赤字が止まらない。
「このまま続けていっても意味がない」。そう悟った高岡は、この技術を応用してベッドのマットレスを作ることを思いついた。賭けではあったが、既存の顧客との関係を清算。1年間ほどマットレスの開発に専念した。
ベッド業界は新技術が多く出ている業界ではなく、ポケットコイルやウレタンマットレスなど、売れている製品も限られている。ここなら切り込めると読んだのだ。
体が沈み込み過ぎず、ちょうどいい寝心地を体感できるマットレス「エアウィーヴ」。樹脂が糸状に編み込まれている。この技術はアスリートや高級ホテル、ANAのファーストクラスなど、そうそうたる採用実績を持つが自主的に向上心を持つように導く。そんな手厚い研修が行われている
もともと、樹脂の糸を自由自在に編み込んでクッション材などを作る技術は持っていた。この技術を駆使して、たとえば中央は少し軟らかめに、縁は硬めにするなど、体圧を繊細に分散できるマットレスの開発に成功した。
しかも製品は薄型で、既存の布団やベッドの上に敷くだけ。大きなマットレスに比べて、手軽に利用してもらえる。樹脂の糸でできているから、通気性も抜群で洗濯も簡単だ。
開発期間の1年間に200枚の試作品を作り、ユーザーの反応を確かめた高岡は「いける」と確信。コールセンターを整備してカタログも用意した。万全を期して新製品「エアウィーヴ」シリーズの販売を開始したのは、07年6月のことだ。