熱心なHONZファンなら聞いたことがある名前だろう。以前に田中大輔がレビューした『英国一家、日本を食べる』の著者である。同書では斜に構えた視点持ちながらも的確に日本の文化の真髄を理解し、皮肉とユーモアたっぷりの文章で日本食をレポートしている。そんな著者が北欧諸国について取材しレポートしているのである。ページをめくる前から期待感が湧いてくるではないか。

フィンランドの
銃所有率は世界第3位

 では北欧諸国は、それほどうまく行っているのか?答えはイエスでもありノーでもある。

 例えばフィンランドを見てみよう。『フィンランド人が教える本当のシンプル』では見えてこない一面が見えてくる。著者ははっきりとフィンランド贔屓であると公言し、その素晴らしさを最初に謳う。優秀な国民、公共マナーの良さ(他の北欧諸国は意外にマナーが悪い)、国際ランキング1位の教育制度、格付け機関からトリプルAを付けられる健全な財政、もっとも公的機関の腐敗が少ない国などなど。

 しかし、その半面では国民の銃の所有率は世界第3位で殺人の発生率は西ヨーロッパ(原文ママ)で最高という負の側面があるのだ。またフィンランド人が摂取している処方薬のトップスリーは1位が抗精神病薬、2位がインシュリン、3位が別の抗精神病薬だという。向こう見ずな大酒のみが多く、自殺の発生率が非常に高い。

 どうであろう、このような点だけ見ても映画『かもめ食堂』的なフィンランドのイメージが揺らぐのではないだろうか。

 では、「人生が辛いと感じるか」という質問に「はい」と答えた国民がわずか1パーセントしかいないとされるデンマークを見てみよう。この国では労働人口の20パーセント以上が働いていないという。失業者は就労時の賃金の90パーセントを2年間も保障されている。手厚すぎる失業保険があれば働かない人々も出てくるであろう。北欧のような高福祉政策をとれば、このようなコストとも向き合わなくてはならない点はしっかりと考えるべきだ。

 またデンマークでは、多くの世帯で貯蓄がゼロなのだとか。さらに貯蓄ゼロだけならまだしもデンマーク世帯は多額の借金を抱えている。IMFの調査ではデンマーク人は平均して年収の310パーセントの負債を抱えているという。医療や教育がタダで失業しても収入が断たれることのないデンマーク人のお金の使い方は実に刹那的なのだ。