福井俊彦日銀総裁が3月で任期満了となり、その後任人事が注目されている。日銀総裁人事は、衆参両院での承認が必要となる。野党が参院で多数を占める「ねじれ国会」において、民主党が実質的に拒否権を握っている中で、この大物人事の行方がどうなるのか。
この話題は昨年来マスコミでも関心事となっていたが、最近だと17日の読売新聞が社説で触れている。読売は大連立に対していまだに推進的な立場と推察されるが、衆参ねじれ状況により、政策が膠着することを懸念している。万一、日銀総裁人事が宙に浮くと、「金融政策が司令塔を欠く恐れが指摘される」と、国内経済の「3月危機説」を危ぶむ。
サブプライム問題の影響で不安定な日本経済を、この先どう舵取りしていくか。当然ながら日銀総裁人事は、日本にとって最重要な課題の一つであることは間違いない。
では、次期総裁は誰が適任なのか。今候補として一番に名前が挙がっているのは、武藤敏郎副総裁である。しかし武藤氏が総裁に就任することに、筆者は反対だ。
福井総裁の利上げ政策への疑問符
人事全般に言えることだが、人事というのは一つのメッセージである。ことに日銀は独立性が強く担保されているので、総裁、政策審議委員の人事を通じてしか、政府の意向と民意を反映させるすべがない。
では、この人事のメッセージを通じて何を伝えるべきか。それは、福井現総裁のこれまでの政策についての評定だろう。福井総裁は、ゼロ金利を引き継いで量的緩和につなぎ、一昨年に量的緩和を解除し、ゼロ金利を解除、さらに利上げを1回行なった。ゼロ金利解除と利上げについては賛否両論があり、中には金利の正常化だという意見もある。