「『好きになってもらえる』という点で考えた場合、どうしたら地方を理解してもらえるか。わたし自身、今回のプロジェクトで現地に住んでみて、東京から見ていた徳島の印象と実際は違ったんですよ。地方の衰退がよく言われますけど、わたしは逆に『豊かだな』と思ったんです。一つひとつの賃金を見れば安いかもしれないけれど、食費も安いし、家族みんなで暮らし、なにより時間的にゆとりがある」

ゆるキャラ「すだちくん」も宣伝に一役

──地方は衰退していると言われてますけど、そうではない、と。

「ええ、そうした暮らしとそこから生まれる商品に共感していただける方は実は多いんじゃないか、と考えています。好きになるきっかけって、たくさんあるじゃないですか。例えば自分は徳島に縁もゆかりもありませんでしたけれど、このあいだ阿波踊りをはじめて生で見たんです。もうびっくりして、徳島の見方が変わりました。普段、真面目な人たちがあんなに弾けるんだとか(笑)。阿波踊りを体験して、徳島のことがもっと好きになりましたね。このような地方の持つ面白さや特長を一緒に伝えられれば、商品もきっと手に取ってもらえると思います」

 同じような商品に見えても、それが生まれた風土や手がけた人、そして背景にあるストーリーはそれぞれ異なる。それらを通訳ガイドのように説明していくことが手にとってもらうために重要、ということだ。

阿波ふうどのブランドロゴ

 阿波ふうどの商品にはブランドマークがつけられている。このブランドロゴは横にたおすと『AWA(阿波)』になり、その模様は海、山、川を表している。また、しあわせのなかにあわ(阿波)が入っていることから『幸』の文字にも見えるというロゴである。

「このロゴをいいマークだと思ってもらえるかどうかは、わたしたちの活動次第だと思います。でも、組織っていうのは変化するじゃないですか。ただ、今やっているような縦横を組み合わせて可能性を探り、提案してフィードバックするという機能は組織にとらわれずに根付かせたいと考えています」

 こうして話を聞いていくとブランドとは売り文句やロゴが先にあるものではなくて、あくまで日々のビジネスの結果だとわかる。地方の自立や活性化を言うのは簡単だが、実際は難しい。県庁や農協主体のプロジェクトは批判の対象になりやすいが、古い体制に文句を言っても状況は好転しない。

 溝口さんからお話を伺って感じたことは、新名産をつくるために必要なことは組織や立場を超えた人の繋がりである、ということだった。ビジネスにおいては人のつながりは基本中の基本だが、地方においてはその重要性はさらに増す。産物は自然の恵みだがそれを名産品にするのは人なのである。純粋な人の熱意は周囲を動かす。

「タイムマシーンで今年の正月の自分に会って『お前、徳島で働くことになるんだぞ』と教えてあげても信じないでしょうね。あの頃にはお盆になったら阿波踊りを踊っている自分なんて想像もできなかった。これもすべて人の縁ですよね、結局」

(取材・文・撮影/樋口直哉)