夫に頼まれて
EDの名医に夫婦で受診

 ――それから2週間後。直子さんは正毅さんに頼みこまれ、EDの名医が院長を務める泌尿器科クリニックを受診した。

 症状や病歴、薬のアレルギー、生活習慣に関する問診票を記入し、それをもとに診察を受けた。

 医師は正毅さんの話をうんうんと頷きながら聞き、病歴など、正毅さんの記憶があいまいな事柄については直子さんにも確認した後、こう言った。

「うん、加齢から来るEDですね。特に心配はありませんが、お困りでしたらお薬をお出ししますよ」

「お願いします!」と即座に答えたのは正毅さん。

 しかし、医師は直子さんの方に向きなおすと、

「奥さんはどうお考えですか」

 と尋ねてきた。ふいを突かれ、驚いたが、意を決し口を開いた。

「薬はいりません。もうすぐ70歳ですもの、自然に任せて構わないと思うのです。EDといっても、病気ではないんですよね」

ED治療を拒む妻は多い
高齢夫婦の性欲のズレ具合は凄まじい

「この奥さんのように、ご主人のED治療を拒む方は多いですよ。ご主人のいないところで、もう堪忍して下さい、私はいやなんですと。一緒に受診されるくらいですから、仲の良いご夫婦ですがね。なかには80代のご夫婦もいらっしゃいました。奥さんも可哀そうです」

 と名医は言う。

 EDとは、性交時に十分な勃起やその維持ができずに、満足な性交が行えない状態を指す。ストレス、うつ病などの心因性要因、加齢に伴って起こる男性ホルモンの分泌量の低下と陰茎の構造の変化、高血圧、糖尿病などの病気、さらにこれらの病気の治療薬など。さまざまな因子によって引き起こされるが、なんといっても大きいのは加齢の影響だ。