金融の世界で注目される「フィンテック」。しかしつぶさに現場を見ていけば、AIに得意なこともある一方、まだまだ苦手なこともある。個人投資家にとって現在、AIは一体どこまで頼れる存在なのだろうか?
ロボアドバイザーの強みは
「安さ」と「オーダーメイド」化
今、金融業界で注目されているフィンテック。ITやAI(人工知能)を駆使し、便利な金融サービスが続々と登場している。
中でも、個人投資家の興味を引くのは、ロボアドバイザー(ロボアド)だろう。
MSV(クレディセゾン、マネックスグループ、米国の資産運用会社、バンガード・グループが共同で出資し、設立したマネックス・セゾン・バンガード投資顧問)の美好琢磨氏が解説する。
「発注のIT化によって可能になるのは、『安さ』と正確な『オーダーメイド』です」
次のような事例が参考になる。
紳士服のコナカはフルオーダーのスーツが3万5000円~で購入できる「DIFFERENCE」という店舗の展開を始めた。顧客は初回注文時こそ、来店・採寸するが、2回目以降はスマホアプリから生地や裏地の色等を指定するだけで注文可能。データは工場に直接送られ、スーツは宅配で届く。同社の湖中謙介社長は「店舗は小さく、手間も減らせたから低価格を実現できた」と胸を張る。
MSVが手がけるフィンテックの発想は、コナカと非常に近い。今まで、窓口の担当者が行っていた業務を、すべて機械で実施しようというのだ。
ロボアドの機能は、ごく簡単に言えば、最適な資産計画やポートフォリオを提案するAIだ。ポートフォリオの内容は、株式市場の平均株価に連動するETF(上場投資信託)や投資信託など。そしてロボアドは、ユーザーの要望を聞くと「この資産計画と、このポートフォリオであれば、○%の確率で目標金額に達する」などとシミュレーション結果を提示する。