――手作業で……。

「で、まあ、そういった入庫作業も大変なんですが、午後の出荷作業もこれまた大変なんです。倉庫を借りているお客さんから、出荷のオーダーが山のように流れてくる。『これはラベルを貼った上でデパートに送ってください』とか、『これはギフト包装してください』とか。個別にいろいろとオーダーが決まっていますから、当時は、そのオーダーにしたがって商品を次々と倉庫から出荷していました」

――倉庫会社って、そこまでするんですね。

「そうなんですよ。工場物流の場合だと、トヨタのかんばん方式じゃないですが、必要なタイミングで必要な部品を工場に送らないといけない。『ある特定のネジを130個送って』などのオーダーが入ってくるわけですが、1つでも間違えたらラインが止まってしまいますから、プレッシャーも大きいんです」

――なるほど。

「企業」から「個客」相手へシフト

 大手の顧客を相手にすれば、それだけ大口の取引ができる。半面、景気の波を受けやすく、価格競争に巻き込まれるとどうしても立場が弱く、受け身になりがちという問題もあった。

「物流の主役が海運から空輸へと移っていくなか、どのような方向へ向けて事業を発展させていくべきかという議論は、これまでも何度か社内であったと思います。ただ、本格的に舵を切り直したのは5年前、組織をスリム化した時だと思います。この時に、ルーチン業務にかかわる部門などを可能な限り外注するなどして、従来あったBtoBの事業からBtoCの事業へと軸足を移す体制を作りました。単なる保管サービスから預かるモノやコトに価値をつけていくサービスへと転換し始めたのも、この頃からです」

物流の主役が運輸から空輸へと移るなかで、寺田倉庫の事業の軸足も「BtoC」へ、そしてITを活用するビジネスへと発展していく

 富裕層から高級ワインを預かるワインセラー事業もアートの保管事業も、それまで倉庫会社が相手にしてこなかった「個客」を対象としている点に特徴がある。月森さんらが立ち上げたミニクラのサービスも、そうした流れのなか生まれてきた。

「成り立ちから説明しますと、最初にプロジェクトの話が持ち上がったのはやはり5年前です。その頃は、仙台にトランクルームを作ろうかという話をしていました。ただ、トランクルームはその時点ですでに我々がやりたい感じの市場ではなかったため、ただ単にスペースを貸し出すだけではなく、もっと倉庫業本来の強みを生かせる事業にできないかということでアイディアを練り直したり、組み立て直したりしながら作っていったのが、このミニクラのサービスでした」

 取材に同席していたミニクラのチームリーダーである柴田可那子さんが、詳しい仕組みを説明してくれた。

「簡単に言うと、ミニクラは誰でも、どこからでも自分だけのパーソナル倉庫を持てるというサービスなんです」