アメリカで演説家として名高く、日本でも知られているエルマー・ホイラー氏。この人の有名な言葉に、
「最初の10秒で、聞き手をつかめ。もし、つかみ損なうと、後の10分かけても、挽回は難しい」
というのがある。
落語家なども、話芸として「噺(はなし)のまくら」を大切にする。このまくらによって「本日のおはなし」へと、お客の心を引きつけていくのである。
「導入部」での話の持って行き方には、充分に力を入れ、技術を磨くことだ。
画像など、ビジュアルに頼るのではなく、あなたの口頭のコミュニケーション・スキルによって、聴衆の心を、初期段階で、こちらに向けさせるのだ。
そのための工夫を、3つにまとめて述べていこう。
ともすると、ジョークなどによって、聴衆を笑わせる技術を求める人がいるが、ジョークは難しい。下手に使うと、かえって雰囲気がシラケてしまう。タレントや芸人の真似はしないほうがよい。
「あいさつ」に失敗しても大丈夫!
心をほぐす雰囲気づくり
第一声の「あいさつ」によって、聴衆の反応がよくないことがわかったとする。こんな場合、雰囲気づくりをして、聞き手の心をほぐすことから始める必要がある。
雰囲気ができていないまま、話を進めると、聞き手からの手応えが得られない、一方的なプレゼンテーションになりやすい。聞き手の反応がないと、話し手も話しにくくなり、プレゼンテーション自体、トーンダウンしてしまう。お互い、盛り上がらないまま、時間がきてしまい、不完全燃焼のまま終わってしまうのだ。
では、雰囲気づくりはどのようにするか。
(1)声を出してもらう
アメリカ人のプレゼンターが、日本人にプレゼンテーションを行った。
「コンニチハ」
と、あいさつしたが、反応がよくなかった。彼はニコニコしながら、
「ワンスモア、コンニチハ」
と、ひょうきんな調子で言った。今度は、一斉に、
「こんにちは!」
と、大きな声が返ってきた。