人を説得するとき、やみくもに突き進んでは、いくら表現力を駆使して喋っても、見当はずれの話になってしまう。そうならないためには、何が相手にとっての「説得のツボ」か、前もった確認や調査によって見当をつけ、その後にツボをやわらかく押して説得へと導いていくことが必要だ。
そこで最終回である今回は、「説得のツボ」を押さえるために効果的な方法をご紹介したい。
問いかけ、メリットの強調で
「必要性」を実感させる
部下の意欲と能力を向上させるには、上司のコミュニケーション・スキルアップが急務であるとの提案を、上司が集まる会合で行うとする。
プレゼンテーションを成功させるためには、コミュニケーションのスキルアップが必要であり、そのためにセミナーに参加することが必要なのだ、と気づいてもらわなくてはならない。
「コミュニケーションの大切さ」などと言うと、「いまさら言われなくてもわかっている」と、反発・反論する人たちも出てくる。
人間は、わかっていると思っていることを、そのとおり実行できているとは限らない。しかも、実行できていないことに気づかないまま、「わかっている」と思い込んでいたりする。頭でわかっていても、実行できていないのはなぜか。必要性を実感として、理解していないからである。
「必要だ」
「本当に大切なことだ」
このように実感させるように、プレゼンテーションで話さなくてはならない。そのための工夫として、以下のようなものがある。
(1)問いかけをして、考えさせる
「最近部下とのコミュニケーションで、すれ違いが多いと思いますか」
「言おうとしていることが通じない、また相手の言っていることがよくわからない。そんな経験をしたことはありますか」
などの問いかけをして、「ある」と答えた人には、その原因はなんだろうかと、さらに問いを重ねて、考えてもらう。いったん自分で考えることで、必要性に思い当たることも多い。中には、
「コミュニケーションって難しいな、と薄々感じていたんだが、いま、その理由がわかったよ」
などと言い出す者もいる。