これも私が産業医を務める事業所についてではあるが、「高ストレス者」の発生率は10%を上回る事業所が多かった。厚生労働省が目安とする“10%”という水準より、やや多い、という印象だ。

 事業所としては、発生率の多寡が気になるところかとは思うが、大事なことは、この結果に対して「セルフケア教育」をどうするかだろう。

職場環境の課題があぶりだされる「集団分析」に消極的?

 では、2番目の「職場におけるストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげる」という目的については、どうだろうか。

 ストレスチェック制度では、職場全体の環境を見るための「集団分析」は“努力義務”とされた。それが大きな理由だろうが、集団分析を実施していない事業所が散見される。

 集団分析に消極的な事業所の言い分を聞いてみると、職場環境の改善点を知ってしまえばそれを安全配慮義務の観点から放置できない、だから努力義務なら知らない方が良い、そんな心理が働いているように思われる。

 一方、集団分析を実施した事業所からは、「仕事の量的な負担が多いことはわかったが、会社が人を増やしてくれない以上、改善のしようがない」、「職場の雰囲気(人間関係)が悪いことはわかっていたが、コミュニケーションの改善など簡単なことではない」といった意見が聞かれた。

 つまり、現状の把握はできたものの、その後の具体的なアクションにつながっていないというのが現場感覚として正しいように思う。

 働く個々人が自らのストレス状況を知ることは有益であるし、ストレスチェック制度がそのための一定の役割を果たすことは間違いない。

 しかし組織の側にとっては「うつ病予備軍のあぶり出し」で終わってしまっては、真の問題解決にはなりえない。

 これまでのメンタルヘルス対策の最大の問題点は「ストレスの低減」に主眼が置かれたことだったと思う。つまり、方策としては労働時間を減らし、責任を軽減し、精神的負荷を和らげる、ということに力点が置かれた。

 しかし、言うまでもないことだが、企業は営利体であり、メンタルヘルス対策も、経営計画の一環として検討される必要がある。ストレスの軽減策が、経営計画の未達を招いてしまうようなことがあるとすれば、それは企業経営の観点からみれば本末転倒である。