メンタル不調のリスクを低減させて、職場環境の改善につなげていくことを目的とし、事業者に労働者のストレスチェックと面接指導の実施を義務づける法律が、12月から施行される。しかし、企業によって対応の進捗にバラツキがあり、制度そのものを知らない従業員が多いのも現状だ。さらに、ストレスチェック制度の結果により、事業者から不利益な扱いを受けるのではないかと心配する声もある。ストレスチェック制度を運用するにあたり、どのようなことに留意すればいいのか。制度の概要とともに、従業員の本音や専門家の意見を聞いていこう。(取材・文/フリーライター・宮崎智之、編集協力/プレスラボ)
いよいよストレスチェック制度スタート
知っておきたいその意義と運用
現代を生きる人々が、ストレスを抱え込むことは不可避だ。特に職場での人間関係などにストレスを感じる人は多く、仕事の意欲や生産性の低下、さらには休職や退職につながってしまうケースもある。
厚生労働省の調査『平成24年 労働者健康状況』によると、60.9%もの人が、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じているという。また、厚生労働省が2012年に発表した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にパワーハラスメントに関する相談を1件以上受けたことがある企業は45.2%にも上ったそうだ。その他、セクハラやマタハラも社会問題となり、行政機関や企業による改善の取り組みの必要性が叫ばれている。
ある30代の男性は、今年5月に勤めていたIT企業を退職した。長時間労働が常態化し、心身に不調をきたすようになったからだ。男性に仕事が集中し、終電後まで仕事が終わらない過重労働が何ヵ月も続いていたという。上司に改善を何度も訴えたが、仕事の調整は行われなかった。
こうしたケースは、あなたの身近でも頻繁に起こっていることではないだろうか。仕事や職場でストレスを抱えることは、従業員にとってリスクであることは当然だが、企業にとっても安定した雇用を確保できない事態を招いてしまう。もちろん、ケースによっては違法性が指摘され、企業としての責任を問われるようなことにもなってしまうだろう。