丸2日間、自宅の和室で
ゆっくりと家族だけでの別れ

 通夜・告別式などに伴う、受付、挨拶、香典のやりとり、お経やお坊さんの説教などもないし、何よりも家族はゆっくり眠ることができる。通夜、告別式は、冬場では会場のどこかが寒いし(かつて祖母の葬儀の際に、叔父が「坊主って、寒さに強いな」と言っていたのが印象的だ)、遺族が心身共にひどく疲れることが多い。ただでさえ悲しい時なのだから、これらがないのは大きなメリットだ。

 火葬は早々に日曜日と決まり、前日の夕方に、納棺師さん(若い女性で、希望してなったという。映画「おくりびと」でも観たのだろうか)が体を清めて、着替えを行ってくれた。遺体の肌を見せないように布を掛けたまま行うのだが、見事な手際で作業が進み、シャツにベストとジャケット、下はズボンという、妻が満足するお出かけスタイルの着替えが、短時間できちんとでき上がった。

 火葬までに家族がすべきことは、棺に一緒に入れる小物(なるべく燃え残らない物)を選ぶだけだ。今回は、息子、娘からの手紙、俳句やメモを書いていた鉛筆の入った筆入れ、娘宛ての住所が印刷された葉書数枚、それに本人愛用の帽子を入れた。

 火葬の当日は、葬儀社の車が来て遺体を運び出した。マンション暮らしのため、部屋に十分なスペースがないことと、棺の運び出しが困難なことから、遺体は葬儀社で棺に納めた。家族は葬儀社の車に同乗し、まず葬儀社へ、次に火葬場に向かう。

 火葬場では、焼香や読経その他が一切なく、立ち会った家族3人と、弟夫婦、甥の6人は、故人との別れを惜しむだけでいい。

 遺体は約90分で焼き上がった。6人で骨を拾い、骨壺に収めた。家族は、葬儀社の車で遺骨と共に自宅に戻った。

 母によると、総費用は、棺代なども含めて、約37万円だったという。やり方にもよるだろうが、お葬式を行うよりは安い。お葬式の場合、香典で費用が賄えるかもしれないが、他人が払うとはいえ、一連のサービスに多額の支払いを行うことだから、その納得性が問題だ。収支だけで考えるべき問題でもないだろう。

 お坊さんなしの弔い(「坊主フリー」と呼ぶか「坊主レス」と呼ぶか迷っている)、をやってみて、「何よりも、家族でゆっくり、心のこもった別れができたのが良かった」というのが故人と長年連れ添った筆者の母の言であり、息子、娘も、100%同意するところだ。