もらったコインの枚数に応じて固定の賞与とは別に支給されるということは、集計してみるまで、合計がいくらになるのか、明確にはわからないということになる。業績にも連動していないため、場合によっては予想以上に人件費が膨らんでしまう恐れもあるのだ。

人事歴17年の畑さんでも、寺田倉庫では「どうしよう」と思うことがたくさんある Photo by T.U.

「幸いにして100人規模の会社ですから、これまでに関しては、それほど予測がぶれたことはありません。ただ、この規模ってすごく難しいんですよ。前の会社も含めて人事を担当するようになって17年になりますが、こんなに難しいと思う会社は初めてです。17年間人事をしていても、まだ『できない』『わからない』『どうしよう』と思うことがたくさん出てきますから」

 理由は、寺田倉庫ならではの多様性にもあった。

「うちは正社員とそれ以外の区別がほとんどないんです。契約社員でも、事業を立ち上げて社長を務めている場合がありますから。ふつうに新卒で入ったような子もいれば、年収1000万円以上もらうエグゼクティブもいますし、派遣や業務委託で入っている方もたくさんいます。仕事をする上では、誰が契約で誰が業務委託かというのはあまり関係がない。オフィスを歩いていても、ほとんど区別はつきません。本当の意味でのダイバーシティーがある会社なので、人事としては大変ですが、そこが、飽きなくておもしろいポイントでもありますね」

――コインの集計方法は、具体的にどうされているんですか?

「自己申告制です。半期ごとに、あげた方ともらった方を照合し、それが支給金額に反映される形です」

――お話を伺いながら、ドクロがマイナス5000円という金額の設定も、けっこうミソのような気がしてきました。ちょっと痛いですけれど、絶妙ですよね……。

「まあ、挽回の余地はある数字です。それに、1000円だとちょっと軽すぎますからね。ただ、これがベストだとは思っていません。いい方のコインに関しては、もうちょっと気軽に渡せる1000円くらいのサンキューコインがあってもいいかなという気はしています。朝令暮改が当たり前の社風ですから、軌道修正は常にしていますし、いったん決めた制度も柔軟に変えていこうと思っています」

ドクロの流通量はチャレンジの数に比例する?

複数の企業を経験してきた畑さんが「寺田倉庫が一番の変態企業」と指摘する理由がわかったかも!? Photo by T.U.

 コインの中でも、ドクロコインはやはり、流通するまでに時間もかかったそうだ。その際、中野社長は「もっとドクロを流通させてほしい」と指示したそう。「失敗を恐れてチャレンジしていないのでは」と、思ったらしい。

「中野の指摘は、目からウロコでした。まさか『ドクロをもっと、どんどん流通させてほしい』と言われるとは、思いませんでしたから」(畑さん)

 聞けば聞くほど、寺田倉庫はおもしろい会社だ。5年後、どうなっているか、わからない会社でもある。今回の原稿は取材開始から公開されるまでそれなりの時間を要したため、その間にも状況が変わってしまわないか、とヒヤヒヤした。

 考えてみれば、それくらいのスピード感が「今」という時代には合っているのかも。複数の会社組織を経験した畑さんが「一番の変態企業」と指摘する理由なのだと思う。