ユニークな企業には、ユニークな経営者がいるものである。福岡県うきは市に本社を置く「キャニコム」の二代目、包行均(かねゆき・ひとし)会長もその1人。
「草刈機まさお」をはじめ、「北国の春…お」や「みなみの春…お」、「男前刈清(おとこまえがりきよし)」などユーモアたっぷりの商品名で話題をふりまき、農業用運搬車の分野で業界トップに躍り出たかと思えば、「ブッシュカッタージョージ」や「ヒラリー」などの度胸あるネーミングで世界にも打って出る。
「斜陽」と言われて久しい業界で、「なんでも三流」だったメーカーを「超一流のグローバル中小企業」を目指せる会社へと変えた仰天の戦略と人生を、3回シリーズでご紹介する。
800坪の敷地に12色の家
キャニコムの包行均会長をインタビューしたのは、年が明けて間もない1月のことだった。業界関係者が集う賀詞交換会に出席するために上京していた会長は、赤いストライプのスーツに柄物の赤いネクタイを締めてカメラの前に登場した。胸にはネクタイと揃いのネッカチーフ。赤縁の眼鏡が目を引く。
――ご著書『ものづくりは、演歌だ。』を読ませていただき、中小企業が大企業を目指すのではなく、「超一流のグローバル中小企業」を目指すという点が、とてもユニークだと感じました。
「キャッチは大事やろ」
――キャッチ?
「九州の田舎もんが目立つには、なにするかっていうことですよ。(ネクタイを持って)これ、これ、これなんです。こういう派手な格好で目立たんと。みなさんね、パッと見た印象で、あ、と思って近寄るでしょ。商品でもなんでもね。一番、人を引き付けるのは色ですよ。だから、私の自宅は12色」
――じゅ、12色?
「赤、黄、オレンジ、ピンク、グリーン……。それが800坪の敷地に建ってるわけ。一番先に目に飛び込んでくるのは黄色。赤はね、遠くからだとちょっと黒っぽく見えるんだけど。遠くからでもすぐわかるわね」
――今日のネクタイも赤と黄色……。
「だけど、目立ついうのは危ないですよ。悪いことで目立ったら、えらいことになります。私の場合、車もレクサスの赤ですから。どこへ行っても、すぐにわかっちゃう(笑)」