米国の消費者に大きな影響力を持つ『コンシューマー・レポート』の「2011年自動車ブランド認知調査」が公表された。特筆すべきは、フォード・モーターの大躍進だ。首位のトヨタ自動車との間に、もはや有意差はない。
(文/ジャーナリスト、ポール・アイゼンスタイン)
世界第二の自動車市場の消費動向を左右するとまで言われる米『コンシューマー・レポート』の「2011年自動車ブランド認知調査」は、自動車ブランドに対するユーザーの捉え方という点で、多くの新しい傾向と意外な事実を明らかにしたが、その中でも最大のサプライズは、首位のトヨタに肉薄したフォードの驚くべき躍進であろう。
同調査におけるフォードの総合スコアは、35ポイント伸びて144点となった。一方のトヨタは、46ポイント減の147点であり、コンシューマー・リポートは統計的に見て両社にいまや有意差はないとしている。
案の定、トヨタは1年以上にわたってさまざまな品質・安全性問題に苦しんだ結果、ブランドイメージに深刻な打撃を被った。一方、フォードは米国市場の勘所を捉えたかに見える一連の新製品投入によって大躍進を遂げたのである。
「消費者が最も重視する要素で、フォードは卓越している」とコンシューマー・リポートは述べている。その要素とは、つまり、「安全性、品質、そして割安感だ」という。
皮肉なことに、このフォードにとっては嬉しいニュースが報じられた前日には、同じコンシューマー・リポートのレビュアーたちが、同社のクロスオーバー車「エッジ」「リンカーンMKX」について「お勧め」との評価を与えないと決定していた。理由は、タッチスクリーンを採用した情報・エンターテイメント統合操作システム「マイタッチ」が「あまりにも複雑で注意がそらされる」ためだという。
だが、それはあくまでコンシューマー・レポートのレビュアーたちの声。外部のレビュアーたちからは、じつはこのフォードのテクノロジーを支持する意見が多数寄せられていた。今回の「ブランド認知調査」の結果を予感させる世論の変化は起きていたのである。
ちなみに、コンシューマー・レポートの「ブランド認知調査」は12月初めに電話アンケート形式で行われ、米国内1721名の成人から回答を得た。調査では、「安全性」「品質」「割安感」「性能」「デザイン・スタイル」「テクノロジー・革新性」「グリーン度(環境性)」という7つのカテゴリーについて、自動車ブランドの印象を調べている。