日本銀行が6年近く続けてきたETF(上場投資信託)の購入策。このほど、個別銘柄の間接保有状況と1年後の姿が試算で明らかになった。市場のゆがみが浮き彫りとなる中、日銀の出口戦略を見通すと、待ち受けるのはいばらの道だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平)
「確かに市場をゆがませているのでしょう……」。日本銀行が金融緩和の一環で始めたETF(上場投資信託)の買い入れ策。株式市場での存在感が日増しに高まる現状に、ある日銀マンは困惑顔だ。“最後の貸し手”たる中央銀行がETFを通じリスクの高い株式を買い入れる異例の政策ながら、保有規模は今なお膨張し続けている。累計購入額は今秋10兆円の大台を突破した。
“異次元緩和”の一策がどれほどの規模感なのか、ビジュアル的に考えてみると面白い。仮に10兆円分の一万円札を真上に1枚ずつ積み重ねると、その頂は実に「高度100キロメートル」に達する。これはほぼ地球の大気圏と宇宙との境目とされている領域なのだ。
上図を見てほしい。日銀のETF買いは、白川方明前総裁の下、投資家心理の改善に伴う日本経済への波及効果などを狙って、2010年に始まった。
当初の買い入れ額は年間数千億円程度だったが、13年4月に黒田東彦氏が総裁に就任し、量的・質的金融緩和を導入するとペースが加速。買い入れ額は年1兆円となった後、14年10月の追加緩和で3倍の3兆円に増額された。さらに極め付きは今年7月だ。日銀はETFの年間買い入れ額を6兆円にまでほぼ倍増させたのだった。
T&Dアセットマネジメントの神谷尚志チーフ・エコノミストは、海外投資家が年6兆円買い越したとき、日経平均株価は3000円程度上がったと指摘。同額のETFを買う今の日銀も、潜在的に同等の押し上げ効果を持つとみる。