全国どこでも「標準治療」、または
「ガイドラインに沿った治療」が可能!

がんになったときに<br />後悔しない病院の選びかた内野三菜子(うちの みなこ)
東京都出身。国立国際医療研究センター国府台病院 放射線治療室長。聖マリアンナ医科大学放射線科、埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科を経て、カナダ・トロントのプリンセスマーガレット病院放射線腫瘍科にて、日本人初のクリニカルフェローとなる。並行してトロント大学オンタリオ教育研究所(大学院)医学教育学にて修士号取得。帰国後、国立国際医療研究センター病院を経て、現職。日本医学放射線学会専門医(放射線治療)、がん治療認定医

 この「標準治療」とは、「現時点でのベストの治療」の意味です。「標準」と聞くと、「並の」とか「普通の」など、一般的にはあまり優れたイメージではないかもしれません。

 しかし、医療の世界では、安全性と有効性がもっとも高いことが科学的に証明されたベストな治療法を指します。「世界標準」を「グローバル・スタンダード」と呼ぶとき、その言葉で説明される中身については、「並」や「普通」よりも優れて安定した品質をイメージするのではないでしょうか?

 医療での「標準治療」は、同様な意味合いだと思ってもらうと、より理解しやすいかと思います。

「標準治療」はがんに限らずさまざまな病気でそれぞれに存在します。特にがんに関しては、がんの部位、ステージ(病期)ごとに、手術の方法、放射線の照射回数、使用する抗がん剤の種類、治療の組み合わせ方などが、世界中の病院で研究され論文に発表された結果や症例をもとに、それぞれの分野の専門家が集まる学会で、専門家の議論のもとに決められます。またこれは随時見直しがされるものです。

この標準的でガイドラインに準じた治療が、全国のがん診療連携拠点病院で、ほぼ同じ内容で受けられるようになってきています。

 医療訴訟になった場合にもガイドラインに準じた治療かどうかが、まず問われます。そして、個々の患者さんの状況に照らし合わせて治療法を選択するときにも必ずこの治療が参考にされ、条件が叶えばそれを行うのが原則ですから、「がん専門の大きな病院でないときちんとした医療が受けられない」といったことはありません。

 特に乳がんや大腸がん、肺がんなど、すでに治療法が確立しているがんの患者さんは、わざわざ遠くのがん研究の専門病院に行かなくても、地域がん診療連携拠点病院で適切な治療を受けられると考えて概ね間違いはありません。

 一般的ながんであれば、「標準治療」が受けられる、「がん診療連携拠点病院」に指定された病院へ行くのがよい。