県内に住む感染者が、かかりつけの歯科クリニックでHIV陽性であると伝えたところ治療を拒否された。その後、相談を受けた高知大学医学部付属病院が県内のエイズ治療の中核を担う病院であったことから、県歯科医師会に正しい感染症対策の周知などを要請。「背景には感染症への知識不足に加え、HIV患者を受け入れる 歯科医院でも公表したくないとの偏見がある。正しい知識の普及に努めていく」と同院の口腔外科医がコメントしている。

 一方、透析治療については、今年、都内在住のHIV感染者(男性・60代)の事例が報じられ、関心を集めた。

 男性は、持病の糖尿病やHIV治療の影響で腎臓の機能が落ち、2010年頃から週2回、透析治療に通っていた。還暦を過ぎ、郊外に転居しようと新たな受け入れ先を探したが、電話でHIV感染を伝えると、「今は、いっぱいなので受け入れられません」と、約40の医療機関から断られたという。

風評被害を恐れる
医療機関

 生島氏によると、これらの医療機関が恐れるのは、医療従事者が患者の血液に触れてHIVに感染してしまう、ということばかりではないらしい。

「風評被害で、他の患者さんが来なくなってしまうのが困ると言うのですよ。でも、それについては東京HIVデンタルネットワークという開業歯科のグループが、面白い調査結果を公表しています。

 自分のクリニックの通院患者に、『当院が東京HIVデンタルネットワークの会員だと知っていますか』『HIV陽性者を受け入れていることを不安に思っていますか』とアンケートで尋ねたところ、『気にしていない』という回答が多かったというのです。もちろん不安に思っている人もいたようですが。こんなふうに、自らの患者さんに聞いてくれた歯科医師たちは素晴らしいですよね」(生島氏)

HIV患者や風評被害よりも
恐ろしい機器の使い回し

 さて生島氏は、院内感染や風評被害よりも、もっと心配すべき、歯科のすごい実態を教えてくれた。

 それは、国立感染症研究所などの研究チームが2014年に公表した調査の結果で、「約7割の歯科医療機関が、歯を削る医療機器を滅菌処理せずに患者間で使いまわしている」という衝撃的なものだった。