「子宮全摘しましょう」
安易に摘出手術を勧める医師

(写真はイメージです)

「子宮筋腫がたくさんありますね。ひとつは大人のこぶしぐらいの大きさですよ。頻尿とか便秘とかで困っていませんか。生理痛も重いですよね。貧血もあるようですし、手術してはいかがですか。子宮全摘がいいですね。お子さんも2人いらっしゃるし、年齢的にももう妊娠のご予定はないですよね。筋腫が大きいのでお腹を切ることになりますね。当院ではできませんので、大きな病院をご紹介しましょう」

 子宮がん検診で訪れた産婦人科の医師は、内診後、よどみない口調で語り、さっさと紹介状を書こうとした。

「ちょっと待ってください。全摘ですか。あのう、筋腫だけ取るのではだめなんですか」

 千尋さん(仮名・42歳)は慌てて質問した。

「もちろん、筋腫だけ摘出することも可能ですけどね。約20%の確率で再発するんですよ。2回も手術じゃ面倒くさいでしょ。根本的に治療するには、子宮の摘出手術しかありません。全摘してしまえば、生理もなくなって楽になりますよ。子宮がなくなるわけですから、子宮がんの心配もなくなります」

 初老の男性医師は、さも「あなたのためには、それしかありません。ワガママはやめましょうね」という顔でうなずく。そんな有無を言わさぬ威圧感に耐えて、千尋さんは言い返した。

「わかりました。家族の世話などもあるので、私の一存では決められません。帰って、主人とも相談してからお返事します」

 医師は、おやおやという顔でこちらを見たが、それ以上の無理強いはしなかった。