こう声をかけてくれたのは、今年69歳になるというマサトシさんだ。九州出身というマサトシさんは中学校を「自発的に卒業」した14歳の頃、大阪に出てきた。以来、西成のあいりん地区を拠点に建設作業員として働いてきたという。だが、3年前、怪我が重なり就労できなくなったことから生活保護を受給するようになったと、問わず語りに語ってくれた。

「保護受けてもな。ああいうのからカネ借りたらあかんわな。10日で1割、2割なんて。あっという間に元金よりも借金のほうが多なるで。ま、保護受けてる人にもいろんな価値観があるからな」

物価の安い西成では
生活保護で十分生きて行ける

 借金はないというマサトシさんのような「余裕のある受給者」は、朝9時から11時までの時間帯にゆっくり「給料(生活保護費)」を取りに来る。

 しかし切羽詰まった受給者はそうはいかない。早朝からゲート・インし、一刻も早く“給料”を受け取り、区役所に横付けされている車に向かって借金の返済を行う。そんな生活保護受給者の1人である50代男性に話を聞くことができた。

「ま、自分で汗水垂らして働いたカネではないし。日本は先進国家や。いざとなったら弱者は法で守られるゆうことやな。どうしようもなくなったら借金を踏み倒す方法もあるやろうよ。日本はええ国やで。ホンマに」

 こう語る50代男性は、一瞬黙ると、右手の人差し指と中指を揃えて自身の唇に当てタバコを吸うジェスチャーをする。タバコを無心しているのだろう。こんなこともあろうかと、あらかじめ用意しておいたタバコとライターを渡すと、実にうまそうな表情でそれを吸いながら、にっこり明るく笑いながら続けた話を聞かせてくれた。

生活保護支給日は“給料日”――ギャンブルや花街で散財してしまう受給者にも出会った

「今日は給料日やさかい、これからドヤ(木賃宿のこと。この場合は福祉アパートの意味)に帰って仲間と花札でもやって一杯飲んで…飛田(新地)にでも繰り出そうか思うてるんや!」

 悲壮感のようなものは微塵も感じられない。実際、区役所から一歩外に出た受給者たちの様子を見ていると、「オッス!」「後で、一杯やろか?」などと久しぶりに会う受給者仲間同士が明るく声を掛けあう光景を目にすることができる。そんな声掛けの輪のなかにいた1人、ショウタさん(39)は言う。