2015年度から、生活保護受給者たちに年一度の「資産申告」が求められている。預貯金を隠さず申告したところ、生活保護を打ち切られた事例もある。生活保護で預貯金を行うことと、その金額を行政が知ることの必要性と問題点を追う。

任意の「資産申告」強制で
生活保護中止・打ち切りのケースも

ギリギリの生活の中で必死に貯金をしても、生活保護受給者には貯金さえ許されない現実が待っているようです

 2015年3月31日、厚労省は一通の通知を発行した。「『生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて』の一部改正について」と題するこの通知(社援発0331第1号)は、タイトルどおり、生活保護の実施の具体的内容を福祉事務所に示す文書の内容変更を知らせるものだ。ここに、さりげなく盛り込まれたのが、今回のテーマである「資産申告書」問題である。

 生活保護を申請する際には、資産・収入など、経済状況を隠さず申告する必要がある。「先日、宝くじが5億円当たり、当選金が隠し口座に入っている」という人に、生活保護を利用していただくわけにはいかないだろう。申請時、現金・預金・動産・不動産などの資産を記入するのが「資産申告書」だ。

 2014年度まで、「資産申告書」の提出は、申請時のみであった。しかし2015年度からは、少なくとも年に一回、提出することになった。

 通知の該当箇所は、以下のとおりである(下線部は、新しく追加された箇所)。

第3 資産の活用
問13  (略)要保護者に資産の申告を行わせることとなっているが、保護受給中の申告の時期等について具体的に示されたい。

答 
被保護者の現金、預金、動産、不動産等の資産に関する申告の時期及び回数については、少なくとも12箇月ごとに行わせることとし、申告の内容に不審がある場合には必要に応じて関係先について調査を行うこと。
 不動産の保有状況については、 少なくとも固定資産税にかかる不動産評価額の評価替え(3年ごと)の際に併せて被保護者から書面により申告を行わせ( 固定資産税納税通知書がある場合は写しを提出させること。)、 必要がある場合は、更に訪問調査等により的確に把握すること。
(下線部は筆者による)

 下線部が、新規に盛り込まれた部分だ。

 まず、資産申告書の提出は少なくとも年に1回と定められた。現在のところは任意であるけれども、ケースワーカーに「提出してください」と言われて「任意なんでしょう? なら、出しません」と言える人は多くはないだろう。