個人投資家の皆さんの中には、株価の動向と実際の景気・経済の動向は一致しているはず、という思い込みがあるようです。すなわち、景気がよくなれば株価は上がる。またその逆に、株価が上がるということは景気がよくなっているということ……そう判断していいのでしょうか?

 皆さんがよくご覧になっているのは日経平均のほか、NYダウやS&P500、ナスダックなどの株価指数と言われているものですね。しかし、実は同じアメリカの株価指数でも、すべてが同じ動きをしているわけではありません。

株価指数と個別株の値動きの違いに注目!

 まず、指数の動きを比べてみましょう。リーマンショック後の回復局面でも、NYダウはまだ十分戻りきっていませんが、一方、ナスダックはもういいところまで回復しています。ですが、景気はリーマンショック前に戻っているとはとても言い難いですよね。

 リーマンショック以前のアメリカは金融バブルで、金融業がほとんど入っていないナスダックがまったく上がらなかったのに対し、金融株が組み込まれていたNYダウだけが大きく値上がりしたのが実情です。当時のアメリカは未曽有の好景気だったわけで、少なくともナスダック指数と景気が連動していたとは言い難いですね。

 では、さらにNYダウとナスダックのインデックスの構成銘柄を見てみましょう。NYダウの代表的銘柄のGE(ゼネラルエレクトリック。格付けがAAAで、NYダウ構成銘柄で唯一、算出開始以来、ずっと組み入れられている銘柄)と、ナスダック代表のアップルの株価も見比べてみると、また意外なことがわかります。

 リーマンショック後、NYダウはある程度回復しているのに対し、GEの株価はそれほど上がっておらず、ほとんど横ばいです。しかし一方、この間にアップルの株価はナスダック指数よりもはるかに急騰しています。

 そして、アップルが急騰している間のアメリカのマクロ経済の状況は引き続き悪く、失業率も9.8%で高止まりしたまま。少なくともNYダウ指数が回復してもマクロ経済がよくなっているとは言えず、ナスダックの戻りが弱くても中にはアップルのように急騰している会社があったりします。

 つまり、個別の株価や株価指数と景気(マクロ経済の回復)には、まったく相関関係はないのです。逆に言えば、だからこそ株式投資をやる価値がある、とも言えます。

 どんなに景気が悪くても利益を上げられる企業はあり、そんな企業を見つければ景気に関係なくお金儲けができる。これこそ株式投資の真髄で、そこに株式投資をする意味があるのではないでしょうか。

 不景気ばかりを嘆かずに、いい企業を発掘して第二のウォーレン・バフッェトを目指しましょう。


●筆者Profile
現役金融マン・ぐっちーさん
大学卒業後、丸紅を経て、モルガン・スタンレーやABNアムロなどで活躍。現在もM&Aや地方再生などのディールをこなす一方、07年に「アルファブロガーアワード」を受賞。AERA、SPA!の連載のほか、「THE GUCCI POST」を開設し、経済金融評論家としても活躍中。

※この記事は1月21日発売の月刊マネー誌『ダイヤモンドZAi』2011年3月号に掲載。3月号の特集は「みんなの確定申告」。便利な“カンタン試し書きシート”付き。