経済政策の呼称に首相の名前が
入ってしまったという不幸

 本質的には、安倍総理が打ち出した異次元緩和政策には限界が見えてきた。外的要因で我が国の経済は持ち直してきたからこそ、ここで新たな政策を打ち出そうというような議論が、本来ならなされるべき局面にある。

 しかし、固有名詞がアベノミクスになってしまったがゆえに、安倍政権が続く限りは、アベノミクスを見直そうとは誰も言えなくなってしまったのだ。そして、もしこのまま2017年の経済が2016年よりも良くなったとしたら、アベノミクスの失敗の検証や政策の見直しなど、政治家は誰も口に出せなくなってしまう。自民党の総裁選挙が近づくので、アベノミクス批判は「イコール安倍批判」と取られかねなくなってしまうという理由も大きい。

 実は、黒田日銀総裁のマイナス金利政策がうまくいかないのは、経済学的に説明ができるそうだ。経済学では、貯蓄と投資はマクロでは一致するという考え方がある。その観点では「カネ余りでもマネーが投資に向かない」などという現象は本来起きにくい。ただ、貯蓄と投資が均衡するためには利子率が自然利子率(景気を緩和するでもなく引き締めるでもない中立的な利子率)と同じになる必要がある。

 そして数年前からヨーロッパで問題になってきたのが、どうやらその自然利子率がマイナスになったらしいということだった。

 簡単に言うと、以前は金利を下げれば投資が活発になったところが、現在では企業の借入金利が(公定歩合がではなく)マイナスにならないと投資が活発にならないということだ。そのためには、預金の金利もさらにマイナスである必要がある。不思議な話だが、「貯金をすると金利がとられる、借金をすると利子がもらえる」という状態になることが、世の中で投資が活発になる条件になってしまったのだが、現在のレベルのマイナス金利ではそうはならない。つまり日銀のマイナス金利は自然利子よりもまだ高すぎて、効果が出ないということらしい。

 しかし、銀行にお金を預けたら金利が取られるという政策が今の日本で実現できるとは思えない。だから黒田バズーカは不発になるし、アベノミクスはうまくいかない。この手詰まりについてきちんとした議論をすべき時期に来ているのだが、国民にとってアンラッキーなことに、「アベノミクスは失敗した」と声高に言えない状況が続いているのだ。