「サルって、見ているとぜんぜん飽きない」

「どの辺が飽きないんでしょうか」

「年老いたボスが、若いのに追いかけ回されたりしているところ、とか」

「ボスなのに、ですか?」

「たぶんそろそろ、引退の時期なんだと思う」

実権を握っているのはメスだった!
意外と知らない“ニホンザル社会”の権力闘争

 ニホンザルの世代交代に、オバタさんは何を感じたのか。

 それを確かめるべく、あらかわ遊園を訪れた。ところが、である。どんなにオリを眺めても、オバタさんが言うような世代交代の気配は感じられない。というよりも、そもそもどのサルがボスなのかさえ、わからないのである。

 しかたなく、飼育責任者にその生態について教えていただくことにした。

「ニホンザルの社会というのは、いわゆる母系社会なんです。ですから、実権を握っているのはオスではなくて、むしろメスの方なんです」

「えっ、オスよりメスの方が偉いんですか?」

「ええ。まあ、そういうことになります。うちでは現在、10頭のニホンザルを飼育していますが、血が濃くなるのを防ぐためにオスは1頭しか入れていません。ですからオスどうしの権力争いというのは、基本的には起こらないはずなんです」

「じゃあ、オバタさんが見たという争いは?」

「おそらく、メスどうしのケンカでしょう。今はちょうど発情期にあたりますので、オスを取り合っていたのだと思います」

「年老いたサルが追われているように見えた、というのはどういう訳なのでしょうか?」

「じつは、群れの中で一位にあったメスザルが白内障を患いまして、片眼が見えない状態にあるんです。ですから、見えない方向から近づかれると驚いてしまう。それを見て、こいつは自分より弱いと感じたほかのメスが彼女を追いかける。お客様はおそらく、その様子をご覧になられたんじゃないかと思いますね」