このあと、宮广氏と和田氏は思う存分に「提供者都合」を排除していった。チューハイの製造工程においても、香味劣化を抑制する技術を開発、さらに缶に詰める際、通常よりも低温で殺菌することによって、果実本来の新鮮な味わいがキープされる製法も実現した。これにより、『もぎたて』のレモンの香気成分は市販品に比べ約10倍も残るようになったという。 

初年度販売目標を
わずか半年でクリア

 こうした「おいしさ」への徹底的なこだわりは、数字にも表れた。今年4月の発売後、わずか半年で初年度販売目標の500万箱をクリアしたのだ。目標を上方修正し、当初計画の1.5倍となる750万箱を目指している。

 平野社長の振り返りが興味深い。

「1987年の『スーパードライ』発売前、当社は『夕日ビール』と揶揄されるほど、シェアを落としていました。この頃、外部から経営者を迎えており、入社すぐだった私は『また外の人か』と冷めた目で見ていました。しかし、新社長は私たちのような一営業の元にまでやってきて、我々の意見を聞いてくれるのです。社内の雰囲気があきらかに変わったのを実感しましたね。また、新商品を出す際にありえない指示が出ました。『製造から時間が経ったビールは店頭から回収せよ』と言うのです。ビールは鮮度が命。今思えば当然の指示だったと思います。店頭に製造から時間が経ったビールがあったら、いつまでもお客様に新鮮なビールは届きませんからね」

 当時の社員は皆「この社長は本気だ!」と感じたという。その裏側で、大規模なマーケティングが実施され、新ブランド『スーパードライ』の開発が行われていたのだ。

「結局、『スーパードライ』発売と、その後の大ヒットは、トップが『本気』を見せたからだったと思います。トップが本気になれば会社は変わりますよ」

 そう、社内では社員それぞれが「もっとよくなるはず」と考えたり「これが現状なんだ、仕方ない」と諦めていたりする。煩瑣な人間関係やしがらみの中で「会社全体を考えればこれが最適」という思いを実現できずにいるのだ。

 そんな中、意思統一をしていくことこそがトップの役割なのだろう。