マーケット縮小という逆風により、ワタミに代表される総合居酒屋が苦戦する中、増収増益を続けている居酒屋チェーンがある。ジャンルは異なれど、得意分野に特化して磨き続けるという共通項がある。各社のトップに、勝ち続ける秘訣を聞いた。第2回は鳥貴族の大倉忠司社長。(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

鳥貴族 大倉忠司社長 Photo by Ayako Suga

──全てのメニューが280円均一、高級ウイスキーの「響」までその値段で飲めるのは驚きです。赤字にならないんですか。

 粗利率が低く、そればかり売れてしまうと商売として成り立たないという商品はあります。鳥貴族でいえばアルコールで、「金麦」は大ジョッキ、「プレミアムモルツ」は中ジョッキです。全ての商品をミックスし、トータルで原価率を適正化して経営しているのです。

──では逆に、粗利率が高い商品もあるわけですね。

 ジャンボサイズで目玉商品になっている貴族焼は違いますが、それ以外の焼き鳥ですね。つまり、普通の居酒屋はアルコールがもうけの源泉になっていますが、鳥貴族は逆なんです。若い人はアルコールの価格に敏感ですから。

ジャンボサイズの貴族焼

 そういう意味では、目玉商品をどう開発するかが、均一価格業態の鍵だと思います。どれも280円並みの商品ばかりでは魅力がないんですよ。100円ショップと同じです。お客さまは「どれがお得か」と探しながら楽しむのです。その裏で、店はもうかる商品を入れているのです。

──それにしても、おなかいっぱい食べて飲んでも1人2000円くらい。安いですよね。

 もともと、客単価2000円の想定で始めました。客単価が低いほど市場は大きいと考えたからです。全国チェーンが可能なビジネスモデルとして、客単価は可能な限りボトムに近づけたかった。立ち飲み以外の居酒屋としてはボトムの価格設定だと思います。